第2話 過去と記憶と運命と act.3

惑星ウォパルの不可思議地域、エネミーの湧かないエリアの調査に来た透火。
原因は直下にある虚空機関の施設保全を目的に設置された結界装置であった。
その装置の設置場所を特定するため、追加調査に乗り出す透火であったが・・・

「・・・はぁ・・・どこにあるのよぅ結界装置ぃ~・・・。」

反応あれど装置は見当たらず、調査開始から(現地時間で)4日が経過していた。
未だ発見報告も挙げれず、ウォパルに滞在する透火。
最初に連れてきていた妹たち3人は、調査継続の可能性が濃厚になった時点で先にシップへ戻らせており、現在は透火1人での調査であった。
・・・いや、1人ではなかった。

『・・・さすがに反応があっても、計測データに不自然な揺らぎが混ざって正確な位置が特定できてないし、なにより地上でない可能性が大いに高いからね・・・。』

アークスが常に携帯するマグ・・・アークスの戦闘技能補助を主とした特性を持つ小型の生体防具であるが、彼女の保有するマグはかなり特別である。
単体で特定人物との交信を可能とするプライベート回線を筆頭に、元来の目的から大きく逸脱する機能をてんこ盛りし・・・カスタマイズという単語では表し得ないレベルの魔改造を施され・・・もはやマグとは名ばかりの別物であった。
現在の通信相手はもちろん、魔改造を施した主であり、このマグもまた自身の一部と称する存在・・・

「ねぇ、おかしくない? 地表部分での座標データと施設内部からの計測データ・・・見れば見るほど数値のズレやら波形やら、ありえないくらい引っ掻き回されててさ・・・トリーがどう見てるのか知りたいんだけど?」
『・・・本体にあるセンサー類の計測データじゃないからね・・・一概には言えないけど、こんな必死に隠す理由が掴めないよ・・・。』

彼女の相棒にして最古の戦友であり、先日の調査の件から補修も兼ねて休暇を過ごしていたキャスト、トリニティである。

『連日の調査データから、おおよその位置と範囲・・・そして効力の強度は判明してるんだけどねぇ・・・。』

通常より大幅に早い現地時間とはいえ、4日が経過しながらも装置発見に至ってない理由・・・それはこのエリア内における強力なジャミングであった。
恐らくは件(くだん)の装置が原因であろう
奇しくも探している装置とジャミングの原因が同じモノと言うわけだ。
ある意味お手上げ状態である。

「・・・最悪だわ。」

脱力と共に恨み節とも取れる一言をもって今回の調査報告書を送信した透火。
その間、キャンプシップでもずっと遊んでいた妹達はすっかり仲良くなっていた。

- 2週間後 -
- アークスシップ4番艦・アンスール 透火のマイルーム -

ウォパルの調査依頼から2週間が経ち、透火はマイルームをアークスシップ4番艦アンスールへと移していた。
10番艦ナウシズのルームは、メンテナンス時に見つかった破損の改修工事が入り、当分使用できない。
本人はトリニティのルームに間借りする気で居たが、周囲からの猛反対&却下を喰らったのであった

「さて、片付けはこんなところかな。」

手早く荷物と手続きを片付けてアンスール在住のフレンド達に挨拶するべく、透火は作業の手を早めた。

ー ??? ー

「・・・さて、下準備は済んだわね。
私のモルモットを返してもらうわよ・・・アークス共。」

狂気と怒気を孕んだ薄ら笑いを浮かべ、黒い女の姿がかき消える。
その場所は普通の人間・・・生物が生身で存在できるはずのない場所・・・多数のキャンプシップが格納されているピラーユニットの外縁・・・宇宙空間。
それからアークスシップ4番艦・アンスール艦内に非常事態を知らせる警報が鳴り響いたのは、黒い女が消えてから僅か500秒ほどであった。

- アークスシップ4番艦・アンスール 艦橋 -

突然鳴り響いた警報・・・しかし、艦橋では1人の女性が冷静に状況を把握し、シップの各所へ情報の伝達と対処を伝えていく。
新生アークス上級職員用の制服に身を包み、童顔にシンプルだがメカニカルなデザインの眼鏡、そして特徴的なツインテール・・・シップ管理を専門として産み出されたハイ・キャスト「シエラ」は、まだ幼さの残る声で各管理職員へ向けた艦内アナウンスを発した。

≪ 第8区42番アクセスポート付近にて謎の爆発現象を確認、トランスポーター及び外壁と一部設備が破損した模様・・・保安員は現場に急行して被害状況の把握と避難誘導を開始してください。≫

現場が現場だけに、一般人へ被害は及ばなかったものの、アクセスポートはキャンプシップとアークスシップを繋ぐ短距離トランスポーターであり、本来なら爆発事故など起きうるはずのない場所・・・
マニュアル通りに対処を進めるシエラだが、その顔には一抹の不安がよぎっていた・・・そしてそれはすぐに「正解」であると分かる

『脆いわね・・・この程度だったらわざわざ進入路を探さずに直接外から入ればよかったかしら?』

人の声とそうでない響きが入り混じった異質な音声・・・この特徴的な声を最後に、現場に急行した保安員の意識は途切れ、彼らとの通信も途絶えた。
その声を同時に聞いていたシエラは、直ちに警報レベルを引き上げ、災害対策のマニュアルから敵性体の襲撃対処へと移行する。

≪ 非常事態発生! 第8区42番ポートよりダークファルスらしき敵性体が侵入! 一般職員及び非戦闘員は緊急退避! 並びにシップ内の全アークスへ緊急通達! 直ちに侵入したダークファルスの迎撃にあたってください! ≫

次回予告

突如現れたダークファルスらしき黒い女
迎撃するアークスを蹴散らし、市街地へと侵入するもそこには歴戦の勇士達が構えていた
だが、黒い女は不敵な笑みを崩さない
奴の目的、そして笑みの理由とは・・・

次回 「襲撃、アンスール防衛戦」

(タイトルネームの方針変更について)
次回より、タイトルネームは謎めいた表現を極力使わない方向で付けていきます
悪ノリが過ぎてましたね、今までのは・・・反省。(´-ω-`)

第2話 過去と記憶と運命と act.2

小さな少女を置いてけぼりにして笑う大人たち。
彩火は少なくとも、原因が自分ではない事だけは理解したが・・・経緯や現状は未ださっぱり理解できないままでいた。

「はははっ・・・はぁはぁ・・・苦しw」

少女よりは大きいが他より小柄な青い髪の少年、シャオは息を整え透火の連れてきた少女に向き直り、咳払いをして話し始める。

「・・・さて、君と会うのは2度目かな・・・僕はシャオ、オラクル船団の中枢存在で、アークスの管理者・・・といってもワケ解んないよね?」
「管理者・・・船団・・・ここお船の中? シャオ、偉い人?」

断片的ではあるが、彼女の理解力は通常の同年代よりはるかに高いようだ。
彩火の年齢はおおよそ10歳前後・・・現代日本で言えばちょうど小学4年生くらいだろう。
この年齢で断片単語とはいえ難解の部類に入る単語をあっさりと理解し、反芻するように返してくるのはある意味異常である。

(・・・情報どおりとはいえ、やはり知能レベルは常人より高い部類だね・・・レギアス、君はどう思う?)
(改造や異常発達の痕跡が見えぬなら、やはり遺伝子操作・・・もしくは先天技能の付与だろうな・・・少なくとも、精神的にはまだ未発達の子供となんら変わらぬ様だが・・・。)

「すまんな、私はレギアスという。君の事は聞いてはいたのだが実際に会うのは初めてでな・・・もう少し近くに来てはくれないかな?」

遠慮がちにレギアスが頼むと、彩火は一度透火を見やり、反対がないのを見てレギアスに近付いていった。
よく見たい、というレギアスの意志を汲んだのか、彩火はレギアスの前でゆっくりめにふわりと一回転して見せ、まるでファッションショーのモデルみたいにポーズを取っていく。
傍から見たら孫の1人ファッションショーを見守る親族と爺にしか見えなかった・・・ただし、この感想が出せるのは全員を見知っている人物に限るが。

「まさに孫と爺、だね・・・なんか独特の雰囲気が・・・」

突然のセリスの一言でハッと我に返る全員・・・あのシャオすらもこの異様な光景に言葉が出なかった様だ。

「んんっ・・・どうやら僕らが抱いてた問題は杞憂だったようだね。」
「・・・そうだな。」

やや引きつった愛想笑いをするシャオと、必死の照れ隠しで冷静を装うレギアス・・・だがあの瞬間はもはや弁解のしようもない雰囲気だったのだが。
透火はシャオの言葉に、初めて心底ホッとした。
子細までは理解できなくとも、事ある毎に疑われ、心休まる時などなかった少女に、過去の自分の断片記憶が重なったのか・・・

「さて、僕たちの用事は済んだし、あとは仲良し同士でゆっくりお茶でも飲んでいくと良いよ。」

そんな台詞を残し、シャオはレギアスを伴って去って行った。
同時に、ずっと監視として付いていたアイカも、いつの間にか居なくなっていた。

- 1週間後 惑星ウォパル 海岸エリア-

アークス最強と突然の遭遇から1週間、妹たちを連れて私はウォパルの海岸エリア・・・その中で何故か敵性体が出て来ないエリアの最終調査に来ていた。
ココに居るのは都合、4人(絶対居ないとダメって言われたから)・・・私(透火)と、双子ちゃん(眞那と瑠那)、そして特別に3人目の妹、彩火も連れてきた。
え、ナゼ連れて来れたのかって? そりゃシャオくんにお願いしたから・・・ってのもあるけど、本人の目の前でそういう依頼をシャオくんがしたから・・・
・・・今になって思うと、こうなる事を知っててワザとやったのかな・・・

「・・・冷たい。」
「とぉりゃ~♪ ・・・・・・・・・ガバゴボググギャ、足攣ったブクブク・・・」
「準備運動もなしに速攻で飛び込むからです、自業自得ですよバカ姉。」

(・・・今日は、彩火のお守りは2人に任せてと・・・)
「さて、調査に向かいましょうかね・・・」

調査・・・そう、ココに来た本来の目的・・・。
惑星ウォパルの一部地域・・・それも非常に限られたエリアだけ、敵性体がまったく出ないという奇妙な区域があるという。
この原因と状況の特定ができれば、今後の掃討作戦への影響もあるし、小規模とはいえ非戦闘地域の確立ができればアークス全体にとっても有益となる。
・・・目的は様々あれど、戦闘目的以外で惑星に降り立てる場所があるという事は、それだけで非常に価値のある事なのだ。

「・・・確かに、全く何も出てこないなぁ・・・。」
『奇妙といえばそれまでだが、何かしら原因があるのは確かだ・・・調査範囲をもう少し広げて捜索を行ってくれ。』
「了解です。」

・・・そういえば最近、通信相手がヒルダさんしか居ない気がする・・・気のせいかなぁ?

- 1時間後 -

「ん~、やっぱり誰も居ないし出てこない・・・。」

調査開始からたっぷり1時間は経過してる・・・でも、敵性体どころか一切の生物反応が無い・・・。
たんに敵性体が出ないだけならそれこど非戦闘地域確立って事で万々歳なんだろうけど・・・一切の生物反応なしってトコが逆に引っかかる。

「ヒルダさん、このエリア・・・不気味すぎますよ・・・。」
『確かにな・・・それほど広いエリアではないとはいえ、生命反応が皆無という点が妙だ・・・。』

ふと、私は以前の事を思い出していた・・・妹・・・彩火を保護した施設の出来事だ。
地下施設だったとはいえ、同じウォパルでの出来事・・・関連性が無いとは言えない。

「・・・ヒルダさん・・・もしかしてだけどこのエリアって、例の海底施設と何か関係ないですか?」
『少し待て・・・あぁ、お前のカンが当たったぞ・・・そのエリアは遺棄施設、ルーサーの研究施設の真上だ。』

となると、原因は自ずと見えてくる・・・海岸から見えない場所にでも、海王種やその他の生物が入って来ないような「仕掛け」があるという事だ。
設置者が虚空機関なら、アークスに対して影響しないのは自明の理・・・という訳だ。

『・・・シャオから追加の依頼が来た、その原因となる「仕掛け」の位置を特定しろ。手段は問わん、機材が必要なら随時転送する。』

・・・デスヨネー(´-∀-`;)
そうこうしてる間に日が傾き始めた・・・ウォパルの自転周期は極めて短い、正確ではないが体感でおよそ8時間くらいで1日が終わるほど高速の自転周期だ。
それでも何故か重力は一定かつ極めて知的生命体の居住向き、そしておまけに惑星総面積の85%が海水という水の星である。
宇宙から見てもメッチャ水だらけだし、惑星自体もけっこう大きいんだけどねぇ・・・。

「機材的なものもありますけど、もっと必要な物があります。」
『・・・なんだ?』
「・・・お泊り用の簡易セット。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・準備でき次第、初期座標に転送する。』

・・・絶対笑われた、あの間で絶対笑われたよ。(´・ω・`)

第2話 過去と記憶と運命と act.1

-アークスシップ10番艦・ナウシズ 居住区画「透火のマイルーム」-

「ふーん・・・で、今に至ると・・・?」

険しい表情ながらこれまでの経緯説明を反芻し、唸る一人の女性。
ブロンドヘアの長髪、そして抜群のプロポーションを持つ女性・・・
セリス・シェールは、視界の端に座っている少女を見やり、そしてまた視線を部屋の主・・・透火へと戻す。

「しばらくは監視付きでフィリアさんに面倒見て貰ってたんだけどさ・・・。」

言葉尻を窄めてく透火をフォローするかのように、テーブルへ紅茶を出しながら瑠那が続きを話す。

「シャオの話では、『実験体だったという事以外に不審な点は見付けられなかった』という事で、発見者であり一番懐かれている義姉さまの元で様子を見て欲しいとの事・・・」
「・・・ですが、引き続き情報部の監視体制は継続中です・・・この件はあまり口外されないようお願いします、シェールさん。」

部屋の入口で壁に寄り佇むのは情報部所属のアークス、バイザーで目元を隠してはいるが敵意などは無い。

「・・・もぅ、アイカちゃんもこっちで一緒にお茶すればいいのに・・・。」
「任務中ですので。」

そっけない態度で即答され、透火は落胆する。
その様子に薄ら笑みを浮かべ、セリスは出された紅茶を啜った。

-アークスシップ中枢部・VR会議室-

その頃上層部では連日会議が行われ、救助された少女・・・『実験体の今後の扱い』について議論は白熱していた。

「・・・今後、何らかの要因で救助された実験体が我々や外部に対して危害を加えないという保証はどこにもありません・・・よって『然るべき処置』を早々に行うか、その身柄を拘束するという方が良いと思いますが?」

然るべき処置・・・ルーサーの実験体として様々な研究の生贄とされた存在は一部を除き、異形の生物になるか、自己を持たず人形のように使われ捨てられるだけであった。
この場合、然るべき処置とはおそらく『人形として殺処分』であろう。
淡々と述べるのは六芒均衡の三にして『二代目』の三英雄・カスラ・・・冷酷とも取れる言だが組織としては当然であり、理由としても妥当である。
しかし、真っ向から拒絶するのは現アークスのトップであり、元は何の力もない一般人であった総司令ウルクと、同じ六芒均衡の六で人助け最優先の無駄に暑苦しい男、ヒューイだった。

「確かに実験体という事や、何らかの原因になりうる可能性はあります・・・ですが、その原因となるものを取り除くなどして、本来あるべき状態にしてあげるという事は出来ないんですか?」
「そうだ!まだ小さいんだから・・・早々に処分とかして後でみんなに恨まれたくないぜ・・・ぶっちゃけ今の監視くらいでいいんじゃないか?」
「暑苦しい無能バカは黙ってなさい。」

前半のウルクの発言はともかく、後半のヒューイの発言は明らかに個人的・・・とはいっても、実際問題、そういう事で逆恨みを持たないとも限らないので否定はできないが。

「では司令、その『要因を取り除く』為に彼女を検査しなくてはなりません。
ですがそれには多少の苦痛や実験的行動も当然含まれています・・・無論、これまで様々な実験を彼女はその幼い体で受け続けてきました。
貴女のその発言は、救助された彼女に『理由や名目は違っても同じ苦痛を与える』という事になりますよ、ウルク司令。」

「だけど、シャオの話じゃ人体実験の痕跡はあっても、それで何か植え付けられたり、妙な細工をされたりした痕跡は無かったんだろ?
俺も即刻処分はやりすぎだと思うぜ、カスラさんよ。」

かつてはいちアークスとして、現在は六芒均衡の四として頼れる兄貴分のゼノが割って入る。
帰還後、当事者の透火達を始め当該の任務に従事した全てのメンバーはシャオ直々の精密検査を受けており、診断結果は全員異常なし。
救出された少女も『実験の痕跡はあるものの、異物や他にない臓器・器官の移植などの痕跡はなく、人体実験の影響で起こり得る外見の変質が散見されただけで特に悪影響を及ぼす要因は認められなかった。』というものだ。

「ですが現状では無くとも、いずれ発見される場合や成長による要因で発生する事例も含め、無策で居れば無視できない事態を引き起こしかねないという事は、理解して貰いたいですね。」

あくまで冷徹なカスラに、今の持論では対抗し得ない事を察するウルク・・・確かに現状無策のままでは、少女が何らかの原因になり得る可能性はゼロではない。

「現状じゃ情報不足で解決策も対抗策も練れないんだ、アタシはもう少し様子を見ても良いと思うんだけどね。」

六芒均衡の二・マリアは現状維持を提言・・・発言こそなかったが、零のクーナも賛同の意志を示していた。

「このままでは平行線だな・・・議論を交わす時間は欲しいが、この話題だけに時間を費やす訳にはいかん。」

黙して全員の意見を聞いていた六芒の一・レギアスが口を開く。
全員の顔を見やり、場をまとめるようにシャオは提案した。

「彼女に対する再検査は一応保留として、準備だけは進めておく事にする・・・それと、チャンスがあったら僕とレギアスで、彼女に対する尋問もやってみようと思う。
彼女の反応によっては、今後に重要な何らかの手がかりやきっかけを掴めるかもしれないからね。」

全員の表情は硬いままだが、他に代案はない・・・。

「それじゃあ、次の議題へ進もう・・・。」

-アークスシップ ショップエリア1F・西側休憩スペース-

噴水広場の西側にあるベンチの一つに座り、武器の手入れをする1人のアークス。
額の角と左右色違いの瞳、水色のショートヘアが黒衣に映える少女・イオは、愛用している武器の向こう側に見え隠れした姿を見つけ、その姿へ向かって挨拶をした。

「こんにちは、透火さん・・・あれ、セリスさんも一緒だったんだ。2人揃って何して・・・・・・?」

同じアークスとして透火とセリスはもちろん知っているし、後ろから付いて来ている人物も格好からしてアークスだという事は分かった。
しかしだ、透火が手を繋いでいる少女は全く見覚えがない。

「・・・なぁ・・・透火さん、その子って・・・。」
「彼女の詳細については機密事項が含まれています、あまり口外はしないで下さい。」

咄嗟に耳打ちで注意に入るアイカ、しかし透火は・・・

「大丈夫だよw この子は私の妹、名前は彩火。」

突然の妹宣言に半ば呆気に取られる一同・・・。
発言した本人だけがさも当然の如くドヤ顔をしている。

「・・・そ、そうなのか・・・はじめまして。」

気を取り直し、少女に挨拶をするイオ。
最初は恐る恐ると手を伸ばしていたが、触れ合ってからは恐怖心もグッと薄らいだようだ。

「お姉ちゃん・・・きれいな眼・・・」
「ん、ありがと・・・キミの髪の色も綺麗だよ。」

彩火と名付けられた少女は、イオの左右で違う瞳を見て宝石のように思ったのだろう。
イオも、彩火の混じり気ない銀の髪を素直に褒めた。

「・・・・・・♪」

少女の顔にうっすらと笑顔が見えてきた事で、透火はホッと胸を撫で下ろす。
暗い表情のままで過ごして欲しくなかった彼女にとって、この出会いは渡りに船となった。

「・・・はぁ、貴女の言動には慣れてきたつもりでしたが、まだまだ私の予測が甘かった様ですね。」

もう好きにしてと言わんばかりのあきれ顔をするアイカ、バイザー越しにでも「もうやだ、この人」という感じがひしひしと伝わってきた。

「ヨロシクな、彩火・・・俺の名前はイオ。」
「さいか? あたし? ・・・お姉ちゃんと、お名前似てる?」

(言動からこの子の知識レベルは年齢相応より少し上・・・理解力もある、感情も欠落してた訳じゃない・・・ただ表現する場がなかっただけね。)
一連の状況を分析するセリス、他には聴こえぬ僅かなその声は隠し持った通信機の相手・・・シャオにのみ届いていた。

『・・・なるほどね、それなら今度は直接会ってみよう・・・誘導をお願い。』
(分かった。)

-アークスシップ ショップエリア・中央噴水広場-

イオと別れ、ショップエリアの中央にある噴水広場へ歩く4人。
彼女らの姿を見つけ、声を掛けたのは・・・

「やぁ、2人とも。 その子の様子はどうだい?」
「なぁんだシャオ、わざわざ見に来たの?」
「まぁね・・・僕だって彼女の動向は気になってるんだよ、一番懐かれてるのがキミだって聞いた時に『あ~、これは参ったなぁ・・・』って思ったんだよ?」
「何それ、ひっどーい。」

アークスの管理者にして最重要人物・・・管制を司る『人造全知存在(アカシックレコード)』シャオ。
かつて存在した『全知存在(アカシックレコード)』シオン・・・彼女とアークスをルーサーの手から開放し、「真に求められるアークス」のために尽力した1人であった。
人間を理解し、傍らに在り続けることを選択した彼・・・自らヒトに近くあろうとする彼の言葉はヒトのそれと変わりなく、彼自身もそうあろうと常に努力している。

「シャオ、私は・・・」
「うん、護衛ご苦労様。 この後はこっちで引き継ぐから、カスラにもよろしく言っといて。」

アイカは一礼し、この場を離れていった。
入れ替わりに訪れたのは純白の装具に身を包む老齢のキャスト・・・六芒均衡の一、レギアスだった。

「2人とも、ひと月ぶりか・・・変わりないようだな。」
「六芒の一、レギアス・・・」
「ちょ・・・なんでココに?!」
「シャオの護衛がてら、孫弟子の様子を見にな・・・」

レギアスの存在に驚く透火。セリスは少しバツが悪そうに顔を透火から顔をそむけた。
知ってて知らぬふりするのはやはり心苦しいようだ。

「最初は少々、心配ではあったがな・・・」
「ちょっと、ホント2人とも失礼だっての! 私、そんな信用ないの?!」

六芒均衡であるレギアスにまったく物怖じしない透火。
彼女はいつもこうだった、年上であろうが為政者だろうが彼女は物怖じなどしない・・・長所であり短所・・・彼女は相手が誰であろうとフリーダムなのだ。

「昔、刹那からキミの事を聞いていたのだ・・・まぁ、以前に思っていたよりだいぶマトモであったな。」
「・・・ぐぬぬ、刹那さんレギアスに何を吹き込んでんですかっ!」

シャオとセリスは、2人の即興漫才のような応酬に思わず笑ってしまった。
「ちょっと・・・レギアス、あんまり笑わせないでくれ・・・本題に入れないよw」
「透火・・・その刹那さん?w その人にどんな風に思われてたの?w」

止まぬ笑い声に憤慨する1人、置いてけぼりの小さな少女は、周囲の話が見えない事態に首を傾げるのであった。

「・・・・・・(o’ω’o)?」