第6話 真紅の再臨

≪アークスシップ全艦へ緊急通達!
 船団左舷に異常パラメータを検知、巨大構造物が転移してくる可能性大!
 距離は約2000、出現はおよそ750秒後と推測・・・繰り返す・・・≫

かつて、ダークファルスや「深遠なる闇」の出現予兆など、数々の巨大敵性存在の出現報告はそれぞれに僅かな時間の差はあるものの、マザーシップの中枢存在であるシャオの演算により約30分前には予測が付いていたのだが、今回は全く異なっていた・・・何ら予兆もなしに転移反応を検知、そしてその僅か12~3分後に現れるという現象は前代未聞である
事態を重く見たシャオは管理者権限でアークスの各部署を緊急招集し、同時進行で事態へ対処すべく全アークスへの緊急作戦の指示を発する

かくして、船団宙域付近に突如として現れたダーカーの巣に対して、突入駆除作戦が始まろうとしていた



- マザーシップ内・中枢ユニット 外縁連絡路開口部 -

(宙域パラメータの予測演算にすら引っ掛からず突然の出現・・・取得パラメータに誤差が・・・?
いや、人為的なパラメータ値の改ざんの可能性もあり得る・・・それはともかく、対処を怠る訳にはいかない!)

ウォパルの再調査や深遠なる闇の初期対処も一段落し、守護輝士2人も集中治療の為の冷凍睡眠へと入った為、自身もようやく「深遠なる闇」への本格対処のために中枢ユニットで集中演算に入ろうとした直後の事態・・・シャオはその場で緊急対処を繰り出しながら集中演算を一時延期し、初動対応と事態解決のため再度シップ管理区域へと急いでいた

「既に守護輝士2人はもう治療に入っている・・・今になって動かす訳にはいかないし、『深遠なる闇』は現有戦力でも対応できている・・・誤算さえなければ、無事に終わるはず・・・だけど、なんだ・・・この嫌な感じは・・・?」

模倣体ながら全知存在であるはずのシャオは、今までに感じたことのない得体の知れない感覚に戸惑っていた・・・あらゆる事象をパラメータ化して読み取り、演算によって未来を予測する特殊な存在のシャオにとって、この「嫌な感じ」は未知の感覚だった
普通の人間なら、悪寒がする、とかそういう類のものと認識できるであろう
しかし、人間と違い「感覚」の概念が違うシャオにとって、「悪寒がする」という事象は普通感じるはずのないものであるはずだ

「まさか・・・まだ、虚空機関は・・・!?」

シャオの脳裏に浮かんだ予測の結果は、砂粒より小さい確率の未来だった



- 異常宙域エリア ダーカーの巣・作戦用仮設拠点区域 -

これまでにも数え切れない程、異常宙域に出現したダーカーの巣に対する掃討作戦は行われてきた
今回も手慣れた作業のように先行隊が仮設拠点の設置と安全確保を行い、後詰めの本隊と合流して全域の掃討作戦を行う・・・もはやマニュアル化され当たり前に行動できる作業であった

『・・・周辺区域クリア、橋頭堡を確保・・・警戒レベル2にて合流予定ポイントへ向かう。』

先遣隊の安全確保も済み、本隊との合流を待つため散開した小隊が合流しようと連絡を取っていた
その光景を遠くから見ている一人の人影・・・

「ようやく我の出番か・・・。」

赤と黒、闇落ち、堕天使、そんな印象が目立つ姿の装備を身にまとい、長い赤髪の女性がほくそ笑む・・・その顔は、待ち焦がれた瞬間を前にした狩人にも似ていた



- 異常宙域エリア ダーカーの巣・仮設拠点外縁付近 -

仮設拠点は今回、外縁を廃墟に囲まれた更地に数機のキャンプシップを降ろし、それを中心として仮設テントや大型設備を周囲に配置、周辺部はあらかじめ残敵を掃討した上ではあるが、念のため警戒要員として数チームの守備要員を配していた

「・・・? 誰だ!?」

突然声を荒げる守備隊の若いアークス、見据えていたのは黒尽くめに赤い髪をした長髪の女性だった

「・・・威勢は良いが、隙だらけだ。」

声がした次の瞬間、声を荒げた若いアークスの首が音もなく飛んだ
あまりにも一瞬の出来事、残った体は頭があるはずの場所を手探りで確認しようとし、直後に痙攣を起こして倒れてしまった
異変に気づき他のアークスが集まってくるが赤髪の女は微動だにせず、まるで待ち人を待つかのように周囲に目配せをしながら棒立ちのまま佇んでいた

外縁の一角で起きた異変は瞬く間に広がり、拠点全体に動揺が奔っていた

「敵は黒ずくめで赤髪の女性型! 新手のダークファルスの可能性もある、隊列を組み距離を取って応戦しろ・・・近付かれたら終わりだぞ!」

「ムダだ、その程度で距離を取ったとは言えん!」

赤髪の姿がかき消え、数瞬後には相手の懐に潜り込み、抜刀と同時に一刀両断
さらに数瞬で次の相手の懐に潜り込んで上半身と下半身をサヨナラさせていた
赤髪にとっては人数の差などさしたる問題ではなく、状況がどう転ぼうが己の目的の邪魔にはならないと思っていた、だが、白装束のキャストと対峙した時、その考えを赤髪は捨てた

「これ以上、犠牲者は出させん!」

「やっと来たか、我が宿敵・・・いや、私の唯一の理解者!」

白装束・・・レギアスの顔には明らかな動揺があった
今、己の目の前に立ち、敵として同胞を亡き者とした彼女の顔・・・
それはかつて、代わりに六芒となって守ると誓い、守れなかったヒト
かつてのアルマと同様、己の未熟故に約束を違え、失ってしまったヒト

「・・・何故、今なのだ・・・刹那・・・!」

対する赤髪・・・刹那は明らかに作り笑いと見える笑顔をレギアスに見せつけ、刃を見せつけて叫んだ

「・・・あぁ、レギアス・・・!
 我が生涯でたった一人、土を付けたくなった存在・・・!
 私はこの時を待っていたんだ・・・キミと気兼ねなく戦える、この時を!!」

周囲のアークスたちも雰囲気に気圧されたのか、身動きする人は誰一人なく、ただ静かに赤と白の2人を見守るしかなかった

To be Continued…



次回予告

交錯する赤と白の剣戟
刻一刻と迫る作戦開始の時間の中、レギアスは刹那に問い続ける
しかし状況を打開する間もなく、ダーカー殲滅作戦が始まる
過去に取り残された刹那の剣には、かつての凛々しさなど無く
あるのはただ、目の前の敵を討つのみ
狂気に駆られ剣を振るう彼女の前に、希望と絶望が同時に舞い降りた

次回、PSO2-ACE 第7話 絶望と希望と

俺が・・・最後の希望だ

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