第9話 過去から来るもの

増援として最前線へと降り立ったのは、以前にも新たなダークファルスと戦闘経験があるシナノ  sukeixisu 龍鬼 UKAMの4人と、その一助として新システム「MRS」の提唱・管理責任者でもあるトリニティと、助手という名目で連れて来られたセリスの5人だけだった

「5人・・・だけなのか? 」

人数を確認し、不安を拭いきれないオーザが言葉を漏らす
無理もない、ただでさえ現状は芳しく無く、相対するのは航宙艦レベルの巨躯を誇り、自らを【憤怒】名乗るダークファルスの完全体・・・
たった5人の増援が来ただけでこの状況を打破できるとは到底思えないのも無理はない・・・だが・・・

「前回の戦闘データと新型からのフィードバックのおかげで、多数の問題点も克服できたし、いくつかの改良も施せた・・・前よりだいぶパワーアップしているはずだよ。」

「そりゃ楽しみだな、前の相手はすぐ退いたから何か消化不良みたいな感じでモヤモヤしてたんだ!」

「フン、俺モアノ時ハ満足行クマデ殺リ合ッテナイカラナ・・・今度ハ本当ニ最後マデ付キ合ッテ貰イタイモンダ。」

「俺達もどこまで伸びてるか、前はすぐに終わっちまったし・・・キッチリ付き合って貰うぜ、ダークファルスさんよ!」

「俺達全員で未来を掴む・・・さぁ、アークスの時間だ!」

シナノの言葉に4人がそれぞれ呼応する様に頷き、それぞれ強化されたシステムを起動させる

« HEN-SIN »
« OK, Start your Engine!! »
« COMPLITE. »
« キィィン・・・ィィィィイイイ・・・! »

「「「「変身ッ!!」」」」

シナノ、 sukeixisu  、UKAM、龍鬼の4人がそれぞれが強化スーツを身に纏って戦闘を開始・・・最前線で戦うレギアスとヒューイの元へ合流する
それを見送っていたトリニティとセリスだったが、トリニティは思い出したかのように持っていたトランクを開き、おもむろに新しいベルトを取り出した

「じゃハイこれ、セリスの分ね。」

「・・・え・・・?」

当のセリス本人はポカンとした顔でトリニティを見たまま、何がなんだか訳が分からないといった表情をしている・・・対するトリニティは至って真面目に真剣な表情でベルトを差し出していた

「だから、セリスの分だって・・・コレ。」

「ちょ・・・今回は助手として来てって言われたから付いて来ただけで・・・」

「そうさ、だからコレもお仕事だよ?」

嵌められた、とセリスはこの時悟った
今回は至って真面目にダークファルス迎撃をするために来ている、対するトリニティ自身は完成した新システムの戦闘データを取る良い機会として捉えていた・・・このマッド天才が単なる助手として自分を帯同させる理由など、とうに分かっていたハズだ

「・・・なんで私なの?」

「適合者のテストは初期段階で受けて貰ってたでしょ?
最初の4つじゃ適合リストに挙がらなかったけど、別枠の新型にシフトしていくつか実験してたら対象者になったって訳・・・事後承諾みたいになったのは悪かったけど、このシステムは君以外使えない事も分かってね・・・。」

「・・・分かったわよ、ただし、今後のサポートは期待させて貰うからね?!」

大船に乗ったつもりで任せとけとサムズアップでセリスを見送るトリニティ
追加条件を認めさせベルトを受け取ったセリスもまた、システムを起動させる

« キュィィィ・・・! »

超音波のような独特な音を発しながらベルトがセリスの腰に巻き付き、自動的に光が灯る、同時にセリスの脳裏に誰かのシルエットが浮かび上がり、セリスは無意識のうちに自身の動きをその姿に連動させていた

「変身!!」

掛け声と同時にセリスが身に着けていた装備が瞬く間に形を変え、赤と金の見事な装飾で飾られたプロテクターや胸当てなど、先の4人に近しい防具へと変化した
その姿に、一瞬だけ驚くセリスだったが、すぐに思考を切り換えて前線へと合流するべく走り出した

「・・・・・・。」

セリスが走り去り、一転して真剣な表情に変わるトリニティ
現状の最善の手は打った、だが、脳裏にはまだ一抹の不安がよぎる・・・奴らはこれで倒せるのか、未確認とはいえダークファルスはまだ他にも居るはず、なぜ奴だけがココに出てきたのか・・・

「クソッ……情報不足で未来(解答)が見出だせない!」

苛立ちを隠せず、トリニティの表情が歪む
だがそのすぐ近くへ接近する2つの人影があった……トリニティはその2人に気付くと、打って変わって勝利を確信し【憤怒】の姿を仰ぎ見る



« フフフ・・・六芒均衡といえども、我が力の前には無力!»

次から次へと湧いてくる無数のダーカー、そしてファルス・アームの群れに対し、敢然と立ち向かうレギアスとヒューイ……しかし、いくら六芒均衡と言えどたった2人では眼前の敵を屠る事は出来ても、後ろに倒れるアークス達を守りながら戦うには手が足りない……
しかも、このダーカーは通常のダーカーではなく、周辺の瘴気が寄り集まって形を成しており、いくら倒しても霧散して元の瘴気に戻るだけで、時間が経てば再び寄り集まりダーカーの形を成し、牙を向くだけだ

「さすがにこの数は捌き切れんか・・・!」

最強のアークスとされる六芒均衡……その一であるレギアスを以てしても、この尋常ならざる程の数が相手では多勢に無勢であった……しかし、ヒューイの一言で気配に気付き、カタナを握り直す

「……だが、シャオは分かってたみたいだぜ !」

« CLOCK-UP! »
« START-UP! »

聞き慣れない電子音声が2つ聞こえた次の瞬間、正面に居たはず大量のダーカーとファルス・アームが次々と弾け飛んでいき、瞬く間にダークファルス本体への進路が開かれていく……

「好機……征くぞヒューイ!!」
「がってん!!」

レギアスとヒューイは僅かなチャンスを逃さず、開かれた路を全速で駆ける
すぐ背後にファルス・アームが迫るが2人は気にも留めない
追い縋るファルス・アームだったが、レギアス達が気付いた次の瞬間には不自然な角度で上方に弾き飛ばされ、そのまま弄ばれているかの様に数回ほど中空でバウンドし、そのままコアを穿ち抜かれて消滅していった

« Nice-Drive! »

レギアスとヒューイは、爆発後に前方へ降り立ったプロテクターを纏うキャストとすれ違いやはりこちらも聞き慣れない電子音声を耳にしていた

« 小賢しい、幾ら数が増えた所で! »

地鳴りの如く響く【憤怒】の声に呼応するかの様に、先程までレギアスとヒューイに群がっていたダーカー達が一斉に動けないアークス達へと殺到していく……が、
その間に割って入る一つの人影があった

「……まったく、ココを1人で抑えないとダメって事? 私はそんな無茶ができる
 程強くないっていうのに……!」

鮮烈な赤に金の縁取りが施された防具を身に纏ったセリスが、無数のダーカー群の前に立つ、明らかな劣勢だがその台詞とは裏腹に絶望は感じない……むしろ、
これ程のダーカーを何とか出来てしまうのではないだろうか、という一種の予感をセリス自身は感じていた

「いえ、1人ではありませんよ?」

気配を感じ振り向く左側、そこに居たのは六芒均衡の三……
カスラとクーナが立ち、そのすぐ後ろにはアークス達の大部隊が見えていた

「……とはいえ、大半はこの瘴気の対処に慣れていない様なので、援護と救助に徹して貰いましょう、残りと我々でダーカーを排除します……良いですか?」
「……えぇ、六芒の力、頼りにしてますよ!」
「こちらもその装備の力、アテにさせて貰いますよ!」

カスラとセリス、そしてクーナは互いに頷き合い、後方のアークス達の援護を受けながらダーカーの群れへと立ち向かっていった



- ダーカーの巣 ダークファルス【憤怒】の足元 -

« 漸く辿り着いたか……待ちくたびれたぞ! »

相変わらずダークファルスという奴は常識から大きく逸脱した存在だと思い知った
これ程の力は40年前、全盛期だった【巨躯】と同等……いや、もしかしたらそれ以上ではないかとレギアスの脳裏にかつての光景が浮かんでいた

「……だが、貴様を倒せばこの争乱も収まる……覚悟して貰おう!」

« ククク……それは此方とて同じ事! »
« 貴様ら六芒均衡さえ消せば、他のアークスなど屠るのも容易かろうて! »

未だ余裕を崩さない【憤怒】の声、レギアスとヒューイは本体から伸びる腕を次々と斬り伏せ、頭部のコアへと肉薄した……が、その刃と拳は届かなかった

« クッフフフ……良かろう! »
« 我が全力を以って相手をしてやろう……六芒均衡よ!! »

宣言とともにあれほど巨大だった【憤怒】の姿はかき消え、代わりに現れた姿は人に近く、しかし人より大きく、ヒトを逸脱した戦う為の姿……ダークファルスには、限りなくヒトに近い姿をした「人間体」とその本性であり本体でもある「完全体」ともう一つ、「戦闘体」と呼ばれる姿がある
見た目を変えただけでその強さはどの姿でもほぼ変わらず、行使できる能力の差異はあれどその戦闘力そのものは完全体とさして変わらない……しかも【憤怒】は「全力で相手する」と言っていた

「こりゃあ……長い戦いになるんじゃないか? レギアス!」
「一筋縄ではいかん事くらい承知の上だ……だが、我らは退かん!」

« クフフフ……では、参るぞ! »

次回予告

戦闘体へと姿を変え、レギアスとヒューイの2人を相手に圧倒する【憤怒】
しかし、新たにベルトの使用者となったセリス
そしてトリニティが見た2つの影も最前線へと向かい
六芒均衡とベルトの使い手達が、全力を出した【憤怒】と激突する中
シャオとシエラの背後で蠢く影が、暗躍を始めるのだった

次回、PSO2-ACE 第10話 伝説は塗り変えるもの

今、アクセルを解き放て……!
(次回更新は11/13の予定 お楽しみに!)

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