第1話 惑星(ほし)と少女と暗闇と act.1

スクナヒメとロ・カミツ襲撃事件から約1ヶ月・・・

ロ・カミツの封印状態は「限定空間内の時間停止による継続的拘束状態」と判明し、現場と原生民族である龍族に詳しいアキを加えた対策専門チームが結成され、解決案を模索中・・・

スクナヒメを襲撃した謎の「黒い女」に関しては、目下消息不明・・・

しかし、「黒い女」探索中に謎の信号をキャッチする、それは惑星ウォパルにあったルーサーの研究施設…その未調査区画からであった。

-アークスシップ4番艦・アンスール 一般区画「真紅の酒場」-

「・・・それで、詳細は?」
「ああ、なんつったっけ・・・例の研究施設がある星・・・
そうだ、ウォパルだ。そいつの海底エリアで見つかった研究施設の調査団が護衛のアークスを募集してるってよ。
俺らはそんな大集団を護り切れるか分からねぇ・・・が、お前達ならどうだって奴さ。」

2人の男がバーのカウンター席で内密であろう話をしている。
右の男は見るからに「アークス」らしい装備を整えており、歴戦の猛者感を感じるが、この依頼にはあまり自信が無いという。
左の男は銀髪に白いコートという見た目だが、依頼内容を気にする辺り、同じアークスなのだろう。
・・・強いという風には見えないが

「で、どうよ・・・俺らは辞退するからな、その枠をお前たちに譲ってやるよ。」
どうやらこの2人は「大規模調査団の護衛依頼」、その護衛役に関する話をしていたようだ。

「悪い話じゃなさそうですね・・・じゃあ、上への打診までは其方でお願いします。あとは僕らでやりますから。」
「おうよ、悪りぃな・・・さすがに俺らも歳だからよぉ・・・」
老骨に鞭打って出撃する気はないと右の男は嘆く、左の若い男はそんな彼を労わる。
「代役とはいえ、僕ら新参にとっては晴れ舞台ですからね・・・機会を与えてくれた貴男に感謝を。」
白コートの若い男はそう言って支払いのパスをカウンターに出そうとするが・・・
「嬉しい事言ってくれるじゃねぇか・・・ここはオレの奢りにしてやるよ!」
一足早く右の男が同じパスをカウンターへ突き出し、額は少ないが2人の支払いを済ませて席を立って行った。

-アークスシップ4番艦・アンスール ショップエリア・武器強化カウンター前-

「では・・・」
「一斉に・・・」
「行きます・・・」
3人の若いアークスたちが一斉に手にした装備をショップカウンターへ出す。
目的は「装備強化」、その最終段階である。

結果発表!
「素晴らしく運がないな、君は。」-1
「ふむ、成功じゃないかな?」+1
「素晴らしく運がいいな、君は。」+1

「ぐぁああああ!チクショウ!」
最初に預けた鯛の被り物をした黒コートの男だけが怨嗟の叫びを上げた、残る2人の強化は成功したようだ。
「ふふふ・・・これで私たちは無事に強化完了。・・・次の集会は期待していますよ、ずん。」
「ゴチです。」
「ぬぁぁぁぁあ!」

たかが強化で・・・と思う人もいるであろうが、実際こんな事で一喜一憂するのがアークスの日常である。
そこへ、酒場の方から白コートの若いアークスが輪へ入って来た。
彼らとは同じチームメイトであり、先ほど自身が受けた老骨アークスからの依頼代行の件を仲間に伝えに来たようだ。

「あぁ、トリー・・・見ての通り、ずんだけ失敗だよw」
「生け簀育ちに、大海原は厳しいのだった・・・」
「だまれよぉぉぉぉ!!」
ずん、と呼ばれた鯛の被り物をした黒服のアークス。怨嗟の声で女性2人に叫ぶ。
半ばあきれ顔の白コート・・・トリーと呼ばれたアークス、彼の正式名はトリニティ。
輝く銀の頭髪を豪快に後ろで纏め、端正な顔立ちに赤縁の眼鏡をしている。
耳であるはずの部分には機械が見えており、彼が人間でない事が一目で分かった。

「・・・強化補助剤でもケチったのかい?」
「ちゃんと使ったんだよぉぉぉ!! ・・・ゲージは注意だったけど。」
運に負けたのか・・・トリニティはすぐに直感した。

「そういや、今日はトリーが人モードしてる・・・しかも初めて見るし。」
「あぁ、人と待ち合わせで指定場所も酒場だったからね。」
「トリーは良いよね~、ボディ換装すれば同一人物だって絶対分かんないし。」
集まっている4人で一番身長が低い女性アークス、フォールドアが呟く。

このオラクルにいる4種族の1つ・・・
キャストと呼ばれる種族は機械ベースの専用ボディと生体ベースの汎用ボディをそれぞれ1体持ち、時と場合によって使い分けられる。
だが中には片方のボディだけに執心しており、もう片方を完全に忘れているケースもあるようだが・・・。
トリニティは使い分け派の中でもある程度有名らしく、その名を知る者は多かった。

「で、トリーもショップで何か用事?」
トリニティに次ぐ長身の女性アークス、あまにたは尋ねた。
「あぁ、とある筋から調査団護衛任務の代役を頼まれてね・・・簡単に言うと人数集めに。 ついでにコレの強化かな。」
そう言ってトリニティは取り出した武器に付けてる迷彩を解除、異様な外観をしたアサルトライフルをカウンターへ置いた。
「マジかよ、アーレスじゃんか・・・」
「トリー、いつの間に拾った?」
女性2人が驚きと疑問を含んだ声を上げる、鯛ヘッド・・・ずんもそれに気付きひょっこり顔を出す。
「んでも、なんでまた迷彩?」
「あまり人に自慢するような物でもないし、それに見た目が合わないからね。」
至極当然であろう。 アーレスの名を関する武器は「幻獣・フォトンブラスト」に酷似した外観を持つ高級装備であり、他に類を見ない生物的な外観故に異様に目立つ。
当然、キャストである自身の外見に合うはずもなく、目立つ事を是としない彼自身が迷彩を被せたのだ。

「そうそう…お偉いさんからの依頼でウォパルに行くことになったから、みんな準備して。
大集団の護衛任務だから、殲滅力重視で頼むよ。」
強化カウンターへ武器を預けながらさらりと言ってのけるトリニティ
「上層部直々?!」
「マジかよ、どんな棚ぼたなのさ?」
「わ~い、ウォパルといえば海だぁ~♪」
想定済みの3人の反応を見つつ、トリニティはあっさり最大まで強化を済ませ、倉庫端末で装備を入れ替える。
愛用の装備一式を確かめつつ、先程送られてきた任務内容の詳細を確認・・・その不穏な内容に一抹の不安を感じるのだった。
「・・・遺棄施設最深部の未開エリア、か。」

-惑星ウォパル・海底エリア ルーサーの研究施設・調査対象エリア-

「・・・なんで・・・こんなに・・・湧いてんだよ!!」
「口より手を動かせ! 次の集団が来るぞ!」
「第7波、敵数約700! 接敵までおよそ45!」
「迎撃! 足止め可能なやつは出来るだけ稼げ! 前衛は強化補助貰うの忘れんなよ!」

雲霞の如く襲い来る大量の鳥系ダーカー、それに対し圧倒的火力で対抗している護衛のアークス達。
調査団自体はまだこの区画の入口で待機して貰っている、この中に護衛を伴って突っ込むバカは居ない。
状況的には採掘場で時々発生する防衛戦任務に近い、違う点といえば…防衛対象が戦闘エリア内にはない代わりに、ダーカーが1体でもこのエリアを通過したら任務失敗、という点だろう。
撃ち漏らしさえなければ失敗はありえないが、幾度も押し寄せるダーカーの数が一向に減らない事がアークス達の気勢を削いでいた。
「・・・小型の鳥系だけで大型が居ないことが唯一の救いかな・・・
それでも、この数はさすがにしんどいねぇ・・・」
弾を撃ち尽くしたツインマシンガンを素早く操作し、空となった弾倉を交換しながらクロトが呟く・・・楽な任務と思って参加したのが仇となったようだが、その眼は何か違うことを心配しているようだった。
「・・・何か、いや~な気配がさっきから止まらないねぇ・・・」

-惑星ウォパル・海底エリア ルーサーの研究施設・調査団待機エリア-

「・・・戦線は膠着状態、か・・・調査メンバーの安全が確保されてるなら、こっちも応援に行った方が良いかもね。」
トリニティの言葉に、「七日」のメンバーや同行する直援要員のアークス達も頷く。
調査団の直援部隊として「七日」を含む数チーム、計9名を残し、護衛として参加した大半のアークスは前線でダーカーの群れと戦っている。
だが、ココも決して安全な場所ではなかった・・・ダーカーは来ないが、時々「海王種」と呼ばれる異形の水生生物が散発的に襲ってくるからだ。
幸い、このエリアは天然の要谷のような地形であり、直援の戦力だけでも調査団の安全確保には十分であった。

「・・・ねぇ、さっきからぜんぜん海王種が襲ってこないんだけど・・・」
沈黙を破りフォールドアが呟く・・・周辺は不気味なほど静まり返り、周囲に反響する水音だけが響いていた。
数分前に中型の海王種「ヴィド・ギロス」7体を含む20体ほどの海王種が攻めて来てからもう10数分以上は経っていた。
その前までは5分と経たずに襲撃されていたが、先程からずっと静まり返っている。
「センサーにも動体反応はないね、近辺にはもう居ないのかな・・・。」
トリニティが自身のセンサー類で広域を確認し、この周辺には自分たち以外の生物が居ないと判断した。
「・・・だが、油断はできんぞ? 潜伏しつつこちらを伺っているという事もあり得るからな・・・」

手練れのアークスほど、油断という言葉には気を使う・・・それは戦う者であればどこでも同じだった・・・
「なら、斥候として僕が前に出るよ・・・ずん、いいかい?」
「あ、ズルいぞトリー自分だけいいカッコしようとして~!」
対抗心(?)丸出しな一言とともにずんはトリニティの右に並ぶ。
怪訝な表情を浮かべながらも残るメンバーに合図を送り、トリニティはずんと共に隊を離れた。

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