第18話 鈴の音響かせし「芙蓉」の花

「……い、一体……何が……?」

 強烈な閃光も収まり、降り立ったのは……
透火に似てはいるが……あまりにも雰囲気や子細が似ていない少女だった。

「……な、なぁ……アンタは……」

 恐る恐るシナノは、その少女に問いかける……今頭に浮かんでいる、最も馬鹿げた事象を否定したいが為に……最もあり得ない状態を認めたくないが故に……

「うむ、初挑戦じゃったが……思いの外上手く行ったようじゃ……♪」

 その一言で、シナノの淡い期待は無残にも打ち砕かれた……

 先程まで透火を救うと言い、強力な力を見せ付け、あの【災禍】を軽くあしらった自称フォトナー……芙蓉が、透火を救う方法……それは……

「お、俺は……アイツに……なんて説明すれば……」

 芙蓉は、透火の身体に入り込んだのだった……



 事は重大である……
フォトナーの生き残りが居た、それだけではない……かつて振るっていたフォトンと違う力……あり得ない程の能力を発揮した彼女が消え、代わりに現れた透火らしき少女が芙蓉と同じ口調で喋っているのだから……

「……と、言う訳です」

 一連の事象データと照合しながら、事の子細を報告書と共にシエラから説明を受けたシャオ……もちろん、当事者である芙蓉と思しき人物と、シナノ達もこの場所に集められていた

「ふむ……お主がシャオか、お主が人造全知存在とはな……
 ……あの男、やり遂げおったのか?」

 シャオに関する簡単な紹介を受け、怪訝な顔をする透火(?)
その口調は完全に芙蓉のものだった……

「あの男って、誰の事ですか?」

「無論、あの高慢不遜の優男……ルーサーじゃ、妾の力を知るや否や尊大な態度で接して来よってのぅ……そのしつこさ故に何度か杖に自ら閉じ籠もってやり過ごしておったが……まさかその間に杖ごと持ち去られて長年に渡り研究材料にされておったとは……なんという恥辱の極みじゃ!!」

 説明もそこそこにルーサーへの怒りが再燃して吠える芙蓉……見た目はほぼ透火なのだが、その様子や語りは間違いなくあの芙蓉だった

「さて……芙蓉、でしたね……まずは負傷したアークス達の救援に感謝するよ」

 シャオの言葉に、ほぅ……と手を顎に添え、値踏みするような目線でシャオを見つめる芙蓉(?)……だが、臆する事なくシャオは、次の言葉を告げた

「感謝はすれど、今のアークスにとって……君達フォトナーの存在は怨敵とも呼んで差し支えない存在だ、だから……」

「……皆まで言うでない、そんな瑣末事など最初から承知の上じゃ」

 シャオが全てを伝えるまでもなく、透火(芙蓉)は手でシャオの言葉を制し……全て承知の上だと豪語した

 事実、ルーサーの野望を阻止した直後……アークスの暗部を含めたルーサーの実態、虚空機関の暗躍と、これまでに明かされた非人道的な研究……その全てをオラクル船団全体に対して、一部の漏れもなく晒して以降……アークスとは直接関係のない部署に属する一般人達の、フォトナーへ対する悪感情は……最悪の一言では片付けられない程であった……
 芙蓉も、杖に閉じ籠もっては居たがその間にも研究者達から漏れ聞く情報はしっかりと掴んでおり、同族の恥晒しだと思った程だ

 だが、ここへの道中で語られたルーサーからの脱却シナリオ……そこで失われた命、そして弊害として起こったダークファルス達や深遠なる闇との決戦……
 ……芙蓉は知り得なかった全てを知り、人知れず静かに涙した。

「あの恥晒しの為に、慈しむべき数多の命が失われようとは……赦せなんだ」

 そして芙蓉は己を恥じた……あの男を遠ざける為に行った事を逆に利用され、研究材料にされて閉じ込められ、肝心な時に彼らに手助けも叶わず、のうのうと時を貪り、救うべき者達を見捨ててしまった……芙蓉は己を恥じた、許せなかった……

「……じゃから、妾は例え罵られようと……もう二度と、救うべき者を見捨てぬと誓ったのじゃ」

 芙蓉の決意を聞いたシャオ……他の一同も、芙蓉の言葉に耳を傾け、偶然とはいえ彼女のようなフォトナーが生きていた事に、奇跡を感じずには居られなかった……




次回予告

シャオ達との顔合わせも済み、芙蓉は極秘裏にアークスへと受け入れられる
そしてその事は一部関係者にのみ伝えられ
とある人物の耳にも届くのであった

次回、PSO2-ACE’s
第19話 時を超えた再会

「お主、そんなチビだったかのぅ……?」
「殺ャァァァァァァア!!」

次回の更新予定は11/25の予定です! お楽しみに♪

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