序章1 とある少女の憂鬱

- 旧マザーシップ中枢部 -

 

「・・・馬鹿なぁ・・・っ!? ・・・何処に、どこに間違いが・・・ッ!」

崩れゆく空間の中に響く、あのヒトの声・・・私は今でも時々、あの時の光景を夢に見る
・・・崩壊していくダークファルスの巨体、声の主は史上最後のフォトナーとしてアークスを動かしていた・・・否、支配していた闇だ

私はあのヒトの声を、ずっと前に聞いた事がある・・・でも、何時なのかは思い出せない・・・

 

- アークスシップ4番艦:アンスール ショップエリア-

「・・・それで、どうしてわざわざアンスールまで・・・?」
男はずっと抱えていた疑問を相手へぶつける
相手は質問に応えず黙ったままだったが、その沈黙と態度は理由を語るのに十分だった

その相手、奇抜とも言えるピンクの髪の少女はショップエリアの巨大モニターが見えるエリアの一角で膝を抱え、流れる映像・遠くの喧騒・話しかけてくる銀髪の男
そのすべてに背を向けて顔を伏せ、肩を震わせながらも沈黙を守っていた
「・・・またか、相手が悪いのは当然だけど・・・その豆腐メンタルは何とかして欲しいな・・・。」

銀髪の男はため息を吐きながら、心配しつつも少し棘のある言葉を少女にかけた
少女は自分でも判っていた、そう言われるのももう何度目か分からないが、自分の心の弱さは自覚している

ふと、銀髪の男の後ろから鯛の被り物がひょっこりと顔を覗かせた
「あら残念、ブロークンハート状態かぁ・・・暇なら皆で浮遊大陸でも散歩しに行くかい?  って誘おうとしてたんだけど。」
鯛の被り物は軽いノリでそう言うとフォトンチェアを出して座る
銀の鎖をあしらった黒コートに身を包み、背負った武装は特殊な紋章入りである希少な長槍
一見クールな外見だが唯一、頭だけは完全にシリアスぶち壊しな鯛の被り物だ・・・

銀髪の男は鯛頭の言動に文句は付けなかったが、少し不安げな表情を浮かべて疑問を呈した
「・・・誘ってくれるのは嬉しいけど、他のメンバーは揃ってるのかい? ずん。」
その質問に鯛頭・・・ずんはチッチッと指を振ってこう応えた
「・・・・・・君らが初勧誘で合計3人だよw トリー、もう少し気楽にいこうずぇ~♪」
銀髪の男・・・トリーと呼ばれた男は盛大に呆れたため息を吐き、鯛頭は HAHAHAHA と笑う
「・・・捌いて貰おうかな、フランカさんに・・・」
その瞬間、鯛頭の顔が凍り付き、血の気が引いたのが全員に判った

「冗談キツイから・・・ね、ヤメテクレナイカナ・・・トリニティ様ぁ・・・」
勿論、銀髪の男が冗談で放った一言だが、本気で殺られる危険があると思っているのか
鯛頭が急に大人しくなる・・・いつの間にか沈黙を守っていた少女もこちらを向いていた

「・・・毎度だけど、トリーは冗談で言ってるんだから・・・」
「コレのどこが!? マジな眼光キテるし! 殺気出てるよ殺気!?」
「┐(´∀`)┌ヤレヤレ 透火の言うとおり、冗談だって・・・」
鬼気迫るずんの演技(?)を見て、やや呆れ顔になりながらも少女・・・透火はピンクのポニーテールを揺らして立ち上がり
「やっぱり2人は面白い・・・私も、元気出さなきゃ!」
ガッツポーズを取り、気合を入れ直す透火に、鯛が一言
「・・・透火ちゃん、毎度だけど強化の失敗は日常茶飯事って思わなきゃ、あのドゥモニ(ドゥドゥとモニカ)は強敵だからねぇ」

『言いたい事は分かるが今言うことか!?』 とツッコミを入れたい衝動に駆られるトリニティだった