第7話 絶望と希望と(前編)

周囲を囲む人影は誰一人として動けず、荒廃する大地の中で動く姿はたった2人
赤と白の残像を互いに交錯させ、レギアスと赤い女性キャストが剣戟を交えていた

「……何故だ、君は……!」

「……とうに察してたんだろう? だったら、そういう事だ!」

剣戟と共に言葉を交わす2人……あまりの出来事に周囲は誰一人として動けず、ただ2人の死闘を黙って見ているしかなかった

« 何をやっている?!
 その場の敵性対象は六芒の一に任せ、貴官らは作戦を続行しろ!!»

オペレーターからの罵声が飛び、ようやく周囲が動き始めた
しかし、その事に女キャストは気にも留める様子などなく、ただひたすらにレギアスへ向けて剣戟と狂気を放っていた

「……なぁ、あの顔……どこかで見たことないか?」

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第6話 真紅の再臨

≪アークスシップ全艦へ緊急通達!
 船団左舷に異常パラメータを検知、巨大構造物が転移してくる可能性大!
 距離は約2000、出現はおよそ750秒後と推測・・・繰り返す・・・≫

かつて、ダークファルスや「深遠なる闇」の出現予兆など、数々の巨大敵性存在の出現報告はそれぞれに僅かな時間の差はあるものの、マザーシップの中枢存在であるシャオの演算により約30分前には予測が付いていたのだが、今回は全く異なっていた・・・何ら予兆もなしに転移反応を検知、そしてその僅か12~3分後に現れるという現象は前代未聞である
事態を重く見たシャオは管理者権限でアークスの各部署を緊急招集し、同時進行で事態へ対処すべく全アークスへの緊急作戦の指示を発する

かくして、船団宙域付近に突如として現れたダーカーの巣に対して、突入駆除作戦が始まろうとしていた

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第5話 未来へと向かうために

「始まりはそう・・・かの【巨躯】戦争の前だ。
 私がまだ六芒となる前、私とアルマは・・・1人のアークスの運命を変えてしまったのだ。」

レギアスから語られた衝撃的な内容・・・
かつて六芒と呼ばれる前に、レギアスとアルマは1つの過ちを犯したのだという
それは組織にとっては些細な事、しかし2人にとっては今なお尾を引く悔恨だった

「私はかつて、もう1人の剣士と腕を競い合っていた。
・・・彼女は強かった・・・随分と過去の事だが、私と彼女とはほぼ互角の腕前だった・・・これはマリアも当然知っている。
当時、ダークファルス【巨躯】から世界を・・・アークスを守り続けられたのは、私とアルマだけでなく、彼女・・・刹那の存在もあってこそだった。」

一同は驚愕した・・・刹那とは、【巨躯】戦争の最中にアークスを裏切り、防衛部隊に壊滅的被害を与える引き金となった人物である。
しかし、レギアスから語られた彼女に関する事柄は、当時の情報とはあまりにも掛け離れたものであった

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第4話 異質なる力(後編)

市街地で対峙する数人の人影・・・一人は純白の装具に身を包む六芒の一、レギアス。
相対するのは黒ずくめのダークファルスらしき男。
そしてレギアスと黒男から少し離れて立つのは、シナノ達にベルトを渡し終えて戻ってきた透火ともう一人・・・露出の多い紫紺の衣装に首周りから目立つ羽飾りが印象的な長身の女性だった。

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番外編「その力、仮面に宿して」

- 虚空機関 某・研究施設跡地 -

 私がこの研究を初めて、かれこれもう20年は経った
ある程度までは形になっているものの、肝心な適合者の選定と運用システムの構築に目処が立たない・・・私の研究は既に風前の灯だ・・・総長から研究援助の打ち切りを宣告されて3年は耐えたが、もはや限界が近い・・・
いずれ資金も尽き、生活にも困窮するだろう・・・しかし、私が考案したこのシステムを活用できる者さえいれば、アークスの生還率は飛躍的に上がり、あのダークファルスでさえも難なく撃退できるはずだ・・・あと少し、あと少しなのだ・・・

外からは見えないサングラスの向こうに、確かな何かを感じた目で手記のデータに目を通していたクロトは、表示させていたホロウィンドウを閉じ、何処かへと連絡を取るべく端末を操作し始めた

「・・・やぁ、久しぶりだね・・・ちょっと相談があるんだけど、良いかな?」

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第4話 異質なる力(前編)

「・・・変身!」

叫ぶ声と共に4人は迷いなくそれぞれ動き出す

最初に変身したのはUKAMだった
携帯端末の様なパーツをベルトのスロットへ差し込み、横に倒してベルトにロックする

『Complete!』

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第3話 襲撃、アンスール防衛戦

『敵性体、区画通路から市街地エリアへ侵入!
アークス全員に緊急連絡、市街地に侵入した敵性体を直ちに迎撃してください!!』

シエラの指示で緊急通達が行われ、市街地に警報が鳴り響く
それと同時に市街地の各所にある迎撃設備も稼働し始め、迎撃体制を整えたアークス達も順次現着・・・
過去の教訓と現場の努力が、この短時間で迎撃体制を整えられる結果を産み出していた
しかし、当の迎撃対象である黒い女にとってはただの煩わしい障害が少し増えた程度しか思っていなかったし、実際問題そうであった

「ふふふ・・・小物がぞろぞろとやって来る・・・♪」

黒い女は不敵な笑みを絶やさず、むしろ障害の登場に歓喜すらしたようだった

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第2話 過去と記憶と運命と act.3

惑星ウォパルの不可思議地域、エネミーの湧かないエリアの調査に来た透火。
原因は直下にある虚空機関の施設保全を目的に設置された結界装置であった。
その装置の設置場所を特定するため、追加調査に乗り出す透火であったが・・・

「・・・はぁ・・・どこにあるのよぅ結界装置ぃ~・・・。」

反応あれど装置は見当たらず、調査開始から(現地時間で)4日が経過していた。
未だ発見報告も挙げれず、ウォパルに滞在する透火。
最初に連れてきていた妹たち3人は、調査継続の可能性が濃厚になった時点で先にシップへ戻らせており、現在は透火1人での調査であった。
・・・いや、1人ではなかった。

『・・・さすがに反応があっても、計測データに不自然な揺らぎが混ざって正確な位置が特定できてないし、なにより地上でない可能性が大いに高いからね・・・。』

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第2話 過去と記憶と運命と act.2

小さな少女を置いてけぼりにして笑う大人たち。
彩火は少なくとも、原因が自分ではない事だけは理解したが・・・経緯や現状は未ださっぱり理解できないままでいた。

「はははっ・・・はぁはぁ・・・苦しw」

少女よりは大きいが他より小柄な青い髪の少年、シャオは息を整え透火の連れてきた少女に向き直り、咳払いをして話し始める。

「・・・さて、君と会うのは2度目かな・・・僕はシャオ、オラクル船団の中枢存在で、アークスの管理者・・・といってもワケ解んないよね?」
「管理者・・・船団・・・ここお船の中? シャオ、偉い人?」

断片的ではあるが、彼女の理解力は通常の同年代よりはるかに高いようだ。
彩火の年齢はおおよそ10歳前後・・・現代日本で言えばちょうど小学4年生くらいだろう。
この年齢で断片単語とはいえ難解の部類に入る単語をあっさりと理解し、反芻するように返してくるのはある意味異常である。

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第2話 過去と記憶と運命と act.1

-アークスシップ10番艦・ナウシズ 居住区画「透火のマイルーム」-

「ふーん・・・で、今に至ると・・・?」

険しい表情ながらこれまでの経緯説明を反芻し、唸る一人の女性。
ブロンドヘアの長髪、そして抜群のプロポーションを持つ女性・・・
セリス・シェールは、視界の端に座っている少女を見やり、そしてまた視線を部屋の主・・・透火へと戻す。

「しばらくは監視付きでフィリアさんに面倒見て貰ってたんだけどさ・・・。」

言葉尻を窄めてく透火をフォローするかのように、テーブルへ紅茶を出しながら瑠那が続きを話す。

「シャオの話では、『実験体だったという事以外に不審な点は見付けられなかった』という事で、発見者であり一番懐かれている義姉さまの元で様子を見て欲しいとの事・・・」
「・・・ですが、引き続き情報部の監視体制は継続中です・・・この件はあまり口外されないようお願いします、シェールさん。」

部屋の入口で壁に寄り佇むのは情報部所属のアークス、バイザーで目元を隠してはいるが敵意などは無い。

「・・・もぅ、アイカちゃんもこっちで一緒にお茶すればいいのに・・・。」
「任務中ですので。」

そっけない態度で即答され、透火は落胆する。
その様子に薄ら笑みを浮かべ、セリスは出された紅茶を啜った。

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