« 緊急事態! アークスシップ10番艦ナウシズの動力部に異常発生! »
« 常駐職員全員の生命活動停止を確認、同時に敵性体の侵入の痕跡を確認。 »
« 痕跡の残留フォトンから侵入者はダークファルス相当の存在と思われる! »
« 周辺区画の非戦闘員は直ちに退避、並びに艦内のアークス全員に緊急通達! »
« シップ動力区画内にダークファルス相当の敵性体が侵入した。 »
« 全アークスへ緊急指令! »
« 10番艦の動力区画に侵入した敵性体を排除せよ! »
カテゴリー: 本編シリーズ
第11話 運命(前編)
……一大攻勢から数日後
「……以後、散発的に発生しているダーカー襲撃は、過去の事例よりも規模を若干縮小、出現頻度に至っては大きく水準を下回っている事から、先の大規模攻勢は一定以上の戦果を挙げたものと見做して良いでしょう。」
副司令として報告の総括を読み上げるテオドール、列席している六芒均衡を筆頭に上層部の面々ウルクも静かに内容に耳を傾け、管理者であるシャオも長期集中演算の開始を遅らせて会議に参加していた。
「依然として新たに出現したダークファルスの行方は掴めぬまま…か。」
レギアスが漏らすように現在の最大懸念事項を口にする
新たに出現したダークファルス、過去に出現した【巨躯】と【若人】に酷似しながらもそれぞれ違う能力を獲得し、もはや別物として認識されていた。
「そして自らを【憤怒】そして【嫉妬】と名乗っていました、それぞれを個人として認識し、また呼び合っている事から、今回のダークファルスは少なくとも、個々の思惑で動くよりも、ある程度の連携ないしは共闘関係を以って行動していると見て良いでしょうね。」
ダークファルス【憤怒】は【巨躯】に酷似した外見を有するも、その固有能力は「瘴気」……耐性のない生物の体を徐々に蝕み、やがて自らと同じダークファルスの眷属であるファルス・アームへと変貌させる侵食能力を保有、現状では状態異常を回復するテクニック「アンティ」での回復が見込めず、外科的手段によって解毒処置は施せるが、一度侵食された生体組織を復元する手段はなく、影響を速やかに排除するしか対処法が無い
同じく【若人】に酷似した外見を持つダークファルス【嫉妬】の固有能力は調査の結果「重力」と認定された
その効果範囲は限定的ながら、対象物を空間ごと切除・抹消する能力は、効果発生前の状態に限定して一定以上の高圧縮フォトンによる物理的干渉を行う事で無力化には成功しているが、一度効果が発生してしまえば回避も防御もできないのが現状である
第10話 伝説は塗り変えるもの
« フフフ…我が力に平伏せアークス共! »
「戦闘体」へと姿を変えた【憤怒】が吠える
その声は後方援護に徹していた一部のアークス達に対し、底知れない恐怖を想起させていた
「…勝ち目なんて、あるのか…?」
「あんな化け物、勝てっこないぜ……」
「クソッ、体の震えが止まらねぇ!」
「いけませんね…そろそろレギアス達の援護に回りたいですが、こうも想定外の事態に見舞われると…!」
カスラの表情がわずかに歪む、あれほど巨大だった【憤怒】の完全体が突如としてかき消え、同時に大量の瘴気ダーカーも姿を消している
しかし、周囲に漂う息が詰まるほどの強烈な存在感と威圧感、そして絶望感は微塵も減っていない
先行したレギアス達の安否を気遣いながらも、カスラは残存戦力を再編成し直すべく各部隊の状況把握に務める他無かった
その時、上空を1機のキャンプシップが駆け抜けていく
機体の側面には「混沌に戯れし双子の亡霊」のシンボルが描かれていた
第9話 過去から来るもの
増援として最前線へと降り立ったのは、以前にも新たなダークファルスと戦闘経験があるシナノ sukeixisu 龍鬼 UKAMの4人と、その一助として新システム「MRS」の提唱・管理責任者でもあるトリニティと、助手という名目で連れて来られたセリスの5人だけだった
「5人・・・だけなのか? 」
人数を確認し、不安を拭いきれないオーザが言葉を漏らす
無理もない、ただでさえ現状は芳しく無く、相対するのは航宙艦レベルの巨躯を誇り、自らを【憤怒】名乗るダークファルスの完全体・・・
たった5人の増援が来ただけでこの状況を打破できるとは到底思えないのも無理はない・・・だが・・・
「前回の戦闘データと新型からのフィードバックのおかげで、多数の問題点も克服できたし、いくつかの改良も施せた・・・前よりだいぶパワーアップしているはずだよ。」
「そりゃ楽しみだな、前の相手はすぐ退いたから何か消化不良みたいな感じでモヤモヤしてたんだ!」
「フン、俺モアノ時ハ満足行クマデ殺リ合ッテナイカラナ・・・今度ハ本当ニ最後マデ付キ合ッテ貰イタイモンダ。」
「俺達もどこまで伸びてるか、前はすぐに終わっちまったし・・・キッチリ付き合って貰うぜ、ダークファルスさんよ!」
「俺達全員で未来を掴む・・・さぁ、アークスの時間だ!」
“第9話 過去から来るもの” の続きを読む第8話 「大罪」の名を持つダークファルス
「……な、なんなんだ……あのサイズは……!」
「デケェ……前に戦った【巨躯】よりも遥かに……!」
地を割って現れたのは、巨大な影……8本もの腕と眼を持つ、40年前に初代クラリスクレイスによって封印され、ごく最近において封印が解かれてしまい、再びアークスに対し“闘争”と称して戦いを挑み、今なお猛威を振るうダークファルス【巨躯】、その完全体と呼ばれる姿に酷似していた。
『……虫ケラ共よ、この我が自ら引導を渡してやろう……さぁ、歯向かえ!
そして、この【憤怒】の力の前に力なく跪き、醜く滅び去るが良い……!!』
自ら【憤怒】と名乗り、自信満々にアークスへと宣戦布告。
同時に帯同させた大量のファルス・アームが周辺のアークスへと群がり、文字通りの蹂躙を開始した。
「……っ、シエラ! 全アークスに緊急指示! 調査地点LH403にて【巨躯】に酷似したダークファルスや取り巻きと交戦中! 大至急、応援を寄越して!!」
調査チームとして同行していた総務部副司令のサラが、自身の権限を以てシエラへ緊急指示を伝える
« わ、わかりました! 付近を活動中の全アークスへ救援要請を発令!
以後は緊急対処マニュアル・B-3にて対応しますっ! »
指示を受け取り、シエラも即座に「緊急対処マニュアル」にてシップ内の各部署への指示と全アークスへの通知を開始……その間にも【憤怒】と名乗るダークファルスからは激しい攻撃が続いていた
『フハハハハハ! 我が力の前には、何人であろうと無力よ!!』
“第8話 「大罪」の名を持つダークファルス” の続きを読む第7話 絶望と希望と(後編)
- 異常反応中域・ダーカーの巣 極大反応潜伏エリア -
仮設拠点外縁部の戦闘が終了して約2時間後、侵攻作戦は滞りなく進み、アークスの大部隊の大半が最深部と思われる広い平原のようなエリアへと侵入していた
道中のダーカーはほぼ殲滅され、各シップからの観測で極大反応がこのエリアの何処かに潜んでいると言う報告を元に、広大なこのエリアを探索している
「……なぁ、さっきから思うんだが……。」
「何だよ、もったいぶらず早く言え。」
「……なんで、ボクたち六芒と一緒なのん?」
「……………………知らねぇよ。」
“第7話 絶望と希望と(後編)” の続きを読む第7話 絶望と希望と(前編)
周囲を囲む人影は誰一人として動けず、荒廃する大地の中で動く姿はたった2人
赤と白の残像を互いに交錯させ、レギアスと赤い女性キャストが剣戟を交えていた
「……何故だ、君は……!」
「……とうに察してたんだろう? だったら、そういう事だ!」
剣戟と共に言葉を交わす2人……あまりの出来事に周囲は誰一人として動けず、ただ2人の死闘を黙って見ているしかなかった
« 何をやっている?!
その場の敵性対象は六芒の一に任せ、貴官らは作戦を続行しろ!!»
オペレーターからの罵声が飛び、ようやく周囲が動き始めた
しかし、その事に女キャストは気にも留める様子などなく、ただひたすらにレギアスへ向けて剣戟と狂気を放っていた
「……なぁ、あの顔……どこかで見たことないか?」
“第7話 絶望と希望と(前編)” の続きを読む第6話 真紅の再臨
≪アークスシップ全艦へ緊急通達!
船団左舷に異常パラメータを検知、巨大構造物が転移してくる可能性大!
距離は約2000、出現はおよそ750秒後と推測・・・繰り返す・・・≫
かつて、ダークファルスや「深遠なる闇」の出現予兆など、数々の巨大敵性存在の出現報告はそれぞれに僅かな時間の差はあるものの、マザーシップの中枢存在であるシャオの演算により約30分前には予測が付いていたのだが、今回は全く異なっていた・・・何ら予兆もなしに転移反応を検知、そしてその僅か12~3分後に現れるという現象は前代未聞である
事態を重く見たシャオは管理者権限でアークスの各部署を緊急招集し、同時進行で事態へ対処すべく全アークスへの緊急作戦の指示を発する
かくして、船団宙域付近に突如として現れたダーカーの巣に対して、突入駆除作戦が始まろうとしていた
“第6話 真紅の再臨” の続きを読む第5話 未来へと向かうために
「始まりはそう・・・かの【巨躯】戦争の前だ。
私がまだ六芒となる前、私とアルマは・・・1人のアークスの運命を変えてしまったのだ。」
レギアスから語られた衝撃的な内容・・・
かつて六芒と呼ばれる前に、レギアスとアルマは1つの過ちを犯したのだという
それは組織にとっては些細な事、しかし2人にとっては今なお尾を引く悔恨だった
「私はかつて、もう1人の剣士と腕を競い合っていた。
・・・彼女は強かった・・・随分と過去の事だが、私と彼女とはほぼ互角の腕前だった・・・これはマリアも当然知っている。
当時、ダークファルス【巨躯】から世界を・・・アークスを守り続けられたのは、私とアルマだけでなく、彼女・・・刹那の存在もあってこそだった。」
一同は驚愕した・・・刹那とは、【巨躯】戦争の最中にアークスを裏切り、防衛部隊に壊滅的被害を与える引き金となった人物である。
しかし、レギアスから語られた彼女に関する事柄は、当時の情報とはあまりにも掛け離れたものであった
第4話 異質なる力(後編)
市街地で対峙する数人の人影・・・一人は純白の装具に身を包む六芒の一、レギアス。
相対するのは黒ずくめのダークファルスらしき男。
そしてレギアスと黒男から少し離れて立つのは、シナノ達にベルトを渡し終えて戻ってきた透火ともう一人・・・露出の多い紫紺の衣装に首周りから目立つ羽飾りが印象的な長身の女性だった。