第20話 破滅を齎す妖花

「コイツぁ、ちと面倒な事になりそうだな……!」

ゼノが漏らした一言……それは、眼前に集まる大量の海王種と、ダーカーの軍勢。
それも10や20どころの話ではない……

「まったく、厄介事は厄介事しか呼ばないのね……!」

100に届こうかという大軍勢を前に、ユクリータの溜息が漏れる

「相棒やマトイはまだ動けねぇんだ……俺がしっかりしないと……!」

「あれだけ後輩が頑張ったんだから、私だって少しは役に立たないと……!」

アフィンとエコーは己を鼓舞するように呟く……
そして、アークス4人が臨戦態勢を整え、打って出るため踏み込もうとしたその時。

『……なんとも煩わしい奴らよのぅ、えぇい! 道を空けよ!』

 先程までの軽い言動は何処へやら……
剣呑な雰囲気を纏う芙蓉が、その細腕の一振りでフォトンの乱気流を起こし……あっという間に鳥型ダーカー数十体をまとめて屠る

「……えっ?」
「はぁ……?!」

 呆気に取られるゼノやアフィンを余所に、芙蓉は次々と海王種とダーカーの群れを蹴散らしていく……
武器さえ持たぬ芙蓉が、その両腕を振るう度に次々と消し飛んでいくダーカーや海王種……無論黙って消されるはずもなく、激しい攻撃で抵抗するが……

『鬱陶しいのじゃ!!』(スパァンッ!!)

 という一言と同時に発せられた障壁によってダメージはおろか接近さえもさせて貰えない、そこに両腕を振るって繰り出す「不可視の攻撃の嵐」である……
受ける側である海王種とダーカーは既にヤケクソ突撃ムードであった。




- 15分後 -

 すっかり居なくなった敵影、あちこちに転がる海王種の死骸……そして、最後の1匹の鳥型ダーカーが力なく地面に落ちながら消えていく……

『……これが噂に聞く「ウザい連中」とやらの行動かぇ?』

「……正解と言うべきか、違うと言うべきか……」

 乾いた笑みを貼り付けるしか無いゼノとエコー、ユクリータは一周回って冷静になってしまった頭を抱えながら、芙蓉の問いに答えようと必死である……ちなみにアフィンはこの惨状に只々ボーゼンとするしかなかった。



 それからというもの……敵性エネミーが出てくる度に芙蓉が容赦なくブッ飛ばしていくため、ほとんど護衛らしい護衛をする暇もなく付いて行く一同……
 研究室の最深部らしい場所へと到達した頃には、芙蓉の溜まりに溜まった鬱憤も綺麗サッパリと晴れていた。

『楽しかったのぅ♪ まるで昔やった三○無双のようじゃったわ!』

「何なのよこの人……フォトナーって頭のオカシイ連中ばっかり?」

「俺に聞くなよユク姉……」

「少なくともマトモだって思える人は少なそうね……」

「これでルーサーまで生きてたらと思うと、ゾッとしねぇな……」

 最後のゼノの言葉に「そんな想像しないでよ!!」と全員からツッコまれたのは言うまでもない。

 だが、芙蓉の快進撃も最深部の扉の前で止まってしまった。

『……ふむ、この扉は特殊な鍵が必要じゃのぅ……妾には心当たりがない、よって何処からか探さぬとダメなようじゃな?』

 物理的に通行不能……さっきまでの勢いから『こんな扉など吹き飛ばせば良いのじゃ!』と言って吹き飛ばしてしまうと思っていたのだが、その予想はいい意味で裏切られた。

「……でもよ、ここまでほぼ1本道だったんだぜ? 戻るとしても、そんな仕掛けとか隠し場所なんてあったか?」

「アフィンの言う通りよ。ここまで楽に進んだぶん、ルート上の地形データは完璧に記録してきたわ……特に分岐ルートや隠し部屋なんてモノも見当たらなかったわよ?」

 アフィンとユクリータが道中の記録してきた地形データを再確認しながら反論するが、芙蓉は納得が行かない様子……

『では、この扉は何故開かぬ? 仕掛けもないのなら敵を倒し尽くした時点で用済みであろう?』

「……ってぇと、この扉は……」

 芙蓉の意図に気付いたゼノが口を開く、ニヤリとゼノの言葉に反応した芙蓉……
考えが及ばず、疑問を浮かべるしか無い3人……そして、芙蓉はその理由を答える。

『封印しておるのじゃ、おそらくは妾の半身……黒光錫【クレイス・リシュー】をな』

「……何なんだ? その【クレイス・リシュー】って……」

 疑問に感じたアフィンが芙蓉へと質問する、ユクリータが「アンタ、今までの話聞いてなかったの?」と小突くが、話題を振られた等の芙蓉は調子よく語り始めた。

『妾の身をダークファルスより隠してくれた妾の杖の事よ……妾のみ扱う事が出来る、唯一の武具……その杖は妾の力の一端を利用し、切り離して創ったが故、妾の半身という訳なのじゃ』

「隠れてた顛末はシャオから聞いてるぜ、その杖が【灰錫クラリッサⅡ】のコピー技術の元ってのもな」

 ゼノの言葉に芙蓉は頷き、語りを再開する。

『【クレイス・リシュー】の主な能力は「仮定未来予測」。
 ……文字通り、あの杖は世界の事象を演算する事で仮定した未来を閲覧する能力を持っておる……と、言っても一時的じゃがな?』

 要約すると【クレイス・リシュー】を用いる事で「選択肢」を予測、その先を仮定した未来予測演算を実行し、得られた情報を使用者に開示……つまり未来の選択肢とその更に先を予測し「望む結果を実現させるには、何処をどうすれば良いのか」を教えてくれる(要は攻略本w)という馬鹿げた能力を持っているのである。

『妾は、その杖を使い「ダークファルスから逃げ延びる方法」を予測させ、その過程を忠実に再現してこの時代まで逃げ延びたのじゃ……最も、こんな事になるとは予測していなかったのじゃが……』

 悲しい目をした芙蓉が、己の身体……いや、器として一時的に宿り、死なせまいと治療している透火の身体を見る。
 芙蓉が予測・閲覧し、実行して辿り着いた未来はあくまで当時の【双子】から逃げ延び、未来で現世に戻るまでの過程であり、長い眠りの時を過ごす中で時々夢に見ていた少女が元で悲劇が起こり、目の前で消えていく彼女の命の灯火を消すまいと力を振るう事になったのは予測の範囲外である。

『だが、アンタのお陰で俺の後輩の1人が死なないで済んだんだ……むしろ俺はアンタに礼を言いたい方なんだぜ?』

 ゼノは、ルーサーの傀儡に等しかった過去のアークスを開放し、あるべき姿へと導いた「アッシュ」の先輩であり、彼の同世代である第3世代アークスの兄貴分としての存在から最も信頼が厚い。
 透火もそんな第3世代アークスの1人であり、ゼノにとっては手の掛かる後輩の1人であった……最も、ゼノにとっては第3世代全員が「後輩」なのだが。

「そうそう、私だってあの子が死なずに済んだ事には感謝してもしきれないわよ」

 ゼノの同僚であり、未来を模索する中で晴れてゼノと夫婦になった女性アークス、エコーも口を揃える……本来は少々弱気な彼女だが、ゼノと接する中で自身の才能力を持つ者の役割を見出し、今では六芒均衡の補佐役としてゼノの傍らに立っている。
 透火とは第1世代アークスを師匠に持つゼノ絡みでよく会う事から面識があり、お洒落などで話題も合う事からそれなりの付き合いをしていた。

『……ふふふ、嬉しい事を言ってくれる……ならば妾も、この娘の事をしっかりと治してやらぬとな!』

 そう言って、芙蓉は閉じられた扉に手を添え、先程までとは比べ物にならないレベルの衝撃波を瞬間的に3度もぶつけ、「○重の極み」の要領で扉そのものを跡形もなく破壊し尽くした。

「「「「…………。」」」」

『何じゃ、何を呆けておる? 置いていくぞ~』

 やっぱり規格外は規格外だ、そう思うしかない4人であった。

To Be Continued…

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