第11話 運命(前編)

……一大攻勢から数日後

「……以後、散発的に発生しているダーカー襲撃は、過去の事例よりも規模を若干縮小、出現頻度に至っては大きく水準を下回っている事から、先の大規模攻勢は一定以上の戦果を挙げたものと見做して良いでしょう。」

副司令として報告の総括を読み上げるテオドール、列席している六芒均衡を筆頭に上層部の面々ウルクも静かに内容に耳を傾け、管理者であるシャオも長期集中演算の開始を遅らせて会議に参加していた。

「依然として新たに出現したダークファルスの行方は掴めぬまま…か。」

レギアスが漏らすように現在の最大懸念事項を口にする
新たに出現したダークファルス、過去に出現した【巨躯】と【若人】に酷似しながらもそれぞれ違う能力を獲得し、もはや別物として認識されていた。

「そして自らを【憤怒】そして【嫉妬】と名乗っていました、それぞれを個人として認識し、また呼び合っている事から、今回のダークファルスは少なくとも、個々の思惑で動くよりも、ある程度の連携ないしは共闘関係を以って行動していると見て良いでしょうね。」

ダークファルス【憤怒】は【巨躯】に酷似した外見を有するも、その固有能力は「瘴気」……耐性のない生物の体を徐々に蝕み、やがて自らと同じダークファルスの眷属であるファルス・アームへと変貌させる侵食能力を保有、現状では状態異常を回復するテクニック「アンティ」での回復が見込めず、外科的手段によって解毒処置は施せるが、一度侵食された生体組織を復元する手段はなく、影響を速やかに排除するしか対処法が無い

同じく【若人】に酷似した外見を持つダークファルス【嫉妬】の固有能力は調査の結果「重力」と認定された
その効果範囲は限定的ながら、対象物を空間ごと切除・抹消する能力は、効果発生前の状態に限定して一定以上の高圧縮フォトンによる物理的干渉を行う事で無力化には成功しているが、一度効果が発生してしまえば回避も防御もできないのが現状である

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