第21話 過去より蘇りしもの

 病室内に思い沈黙が漂う……レギアスから発せられた名前、ディア。
本名はオプシディアン、40年前に失踪した……レギアスの従姉弟であった……

「……レギアス、詳細を教えてくれないかな?」

 沈痛なお面持ちのまま、シャオはレギアスに詳細を尋ねる……レギアスもまた、同じ様な沈黙の後に、ゆっくりと語りだした。

「ディアは私を造った人物の近親者……従姉弟とでも呼べば良いか……?
 彼女の方が年上だったので、私は彼女と共に剣を学んだと言っても良い、それも考慮するなら彼女は姉弟子でもあるな……」

 レギアス達第1世代アークスは、当時は特に強力な戦力であった反面絶対数が少なく、希少な存在でもあった為……確実に戦力足る実力が付くまではその多くを訓練に充てられている。
 レギアスは彼女と多くの時間を共に過ごし、間違いなく従姉弟同士として差し支えない程お互いを信頼していた。
 そしてアークスとなってからのオプシディアンは、剣士としてもアークスとしても若くして一流の評価を多方面から受けていた為、レギアスは彼女を常に見習っていた。

 レギアスの実直さは、当時の彼女を見習った影響が非常に大きいであろう……

 教官としても、先輩としても……そして、人としても憧れた彼女の存在は、レギアスにとって唯一無二の存在であった。

 あるいは、彼女が「お前は私の弟みたいな存在なんだ」と言った事もあった。

 彼女は何処の誰に対しても、どんな種族であろうとも、絶対に己のスタンスを変えない人だった……厳命であろうと気に入らなければ上司に喰って掛かり、大小合わせての命令無視の回数は数知れず、仲間ならたとえどんな苦境であっても見捨てず、その剣技一つで道を切り開き、生き残ってきた。

「六芒均衡として私が選ばれた時、彼女は笑って祝福してくれたよ……実力で言えば、本来……六芒均衡は彼女を頭に据えるべきだったのだが、上層部の意向や本人の辞退もあり、私が六芒の一となった……」

「その辺りの情報は隈なく調べたけど……結局どの資料にも無かった。
 ……シオンも意図的に記録していなかったのか、あるいは誰かに消されたのか……」

「恐らくはカスラ……いや、すでにあの頃からカスラではなく、ルーサーだったのだろう……彼女は遺伝子的な相性問題もあって一般人と結婚する事になり、それを機にアークスを引退……そして、40年前の【巨躯】戦争直前までは普通の生活をしていた」

 レギアスの視線が窓の外に移る……そしてこう続けた。

「だが、40年前の【巨躯】戦争でアークスの絶対数が不足した事もあり、彼女はまだ幼い子供達を残して戦線復帰……全盛期より衰えたとはいえ、その実力は前線のアークス達……そして我々六芒均衡を大いに奮起させた」

「……その後、彼女は?」

 サラの言葉に、沈黙するレギアス……だが、最初に発した言葉を噛み締めるかのように、レギアスは口にした。

「……【巨躯】戦争時にアークスへと復帰後、最終決戦の直前で失踪した事が後で分かった……その後もマリアやカスラを始めとした仲間たちが随分と探してくれたのだが……彼女はついぞ見つからなかった……」

《……恐らくは【巨躯】戦争のドサクサに紛れて彼女を拘束……歴戦の実力者である彼女のクローニング、もしくは何らかの実験材料と目論んだルーサーの仕業でしょうね。》

 シエラがウィンドウ越しで会話に入り、推測を述べるが……その真相は既に闇の中である……彼女自身が覚えていなければ、お蔵入り確定であろう。

「彼女のバイタルは安定しているし、もう2~3日で目を覚ますと思うよ……彼女がどこまで覚えているのか、真相はどうなのか……聞いてみたいけど、まずは回復を待たないとね?」

 重い雰囲気をかき消すように明るく振る舞うシャオの言葉に、後ろ髪引かれる思いをしつつも全員が頷き、部屋を後にする。

 数日後、彼女の目覚めと共に訪れる新たな問題……それは既に彼らの背後まで這い寄ってきていた。




次回予告

謎の女性キャストは意識を取り戻し、レギアスとの対面を果たすも
彼女は「完全記憶喪失」状態だと判明する……

一方、透火の肉体を借り受けながら治療を施しつつ
現在のアークスを満喫する芙蓉だったが
道中で突然現れたダークファルス【災禍】と
彼女に追われる【憤怒】らに遭遇し、三つ巴の戦闘へと発展……

六芒均衡の応援もあって辛くも撃退するが
【クレイス・リシュー】の能力で、芙蓉は未来を幻視してしまう……

……それは、遠くない未来に「深遠なる闇が復活する」という
トンデモない未来であった。



次回、PSO2-ACE’s
第22話 再び這い寄る混沌

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