第2話 過去と記憶と運命と act.2

小さな少女を置いてけぼりにして笑う大人たち。
彩火は少なくとも、原因が自分ではない事だけは理解したが・・・経緯や現状は未ださっぱり理解できないままでいた。

「はははっ・・・はぁはぁ・・・苦しw」

少女よりは大きいが他より小柄な青い髪の少年、シャオは息を整え透火の連れてきた少女に向き直り、咳払いをして話し始める。

「・・・さて、君と会うのは2度目かな・・・僕はシャオ、オラクル船団の中枢存在で、アークスの管理者・・・といってもワケ解んないよね?」
「管理者・・・船団・・・ここお船の中? シャオ、偉い人?」

断片的ではあるが、彼女の理解力は通常の同年代よりはるかに高いようだ。
彩火の年齢はおおよそ10歳前後・・・現代日本で言えばちょうど小学4年生くらいだろう。
この年齢で断片単語とはいえ難解の部類に入る単語をあっさりと理解し、反芻するように返してくるのはある意味異常である。

(・・・情報どおりとはいえ、やはり知能レベルは常人より高い部類だね・・・レギアス、君はどう思う?)
(改造や異常発達の痕跡が見えぬなら、やはり遺伝子操作・・・もしくは先天技能の付与だろうな・・・少なくとも、精神的にはまだ未発達の子供となんら変わらぬ様だが・・・。)

「すまんな、私はレギアスという。君の事は聞いてはいたのだが実際に会うのは初めてでな・・・もう少し近くに来てはくれないかな?」

遠慮がちにレギアスが頼むと、彩火は一度透火を見やり、反対がないのを見てレギアスに近付いていった。
よく見たい、というレギアスの意志を汲んだのか、彩火はレギアスの前でゆっくりめにふわりと一回転して見せ、まるでファッションショーのモデルみたいにポーズを取っていく。
傍から見たら孫の1人ファッションショーを見守る親族と爺にしか見えなかった・・・ただし、この感想が出せるのは全員を見知っている人物に限るが。

「まさに孫と爺、だね・・・なんか独特の雰囲気が・・・」

突然のセリスの一言でハッと我に返る全員・・・あのシャオすらもこの異様な光景に言葉が出なかった様だ。

「んんっ・・・どうやら僕らが抱いてた問題は杞憂だったようだね。」
「・・・そうだな。」

やや引きつった愛想笑いをするシャオと、必死の照れ隠しで冷静を装うレギアス・・・だがあの瞬間はもはや弁解のしようもない雰囲気だったのだが。
透火はシャオの言葉に、初めて心底ホッとした。
子細までは理解できなくとも、事ある毎に疑われ、心休まる時などなかった少女に、過去の自分の断片記憶が重なったのか・・・

「さて、僕たちの用事は済んだし、あとは仲良し同士でゆっくりお茶でも飲んでいくと良いよ。」

そんな台詞を残し、シャオはレギアスを伴って去って行った。
同時に、ずっと監視として付いていたアイカも、いつの間にか居なくなっていた。

1週間後 惑星ウォパル 海岸エリア-

アークス最強と突然の遭遇から1週間、妹たちを連れて私はウォパルの海岸エリア・・・その中で何故か敵性体が出て来ないエリアの最終調査に来ていた。
ココに居るのは都合、4人(絶対居ないとダメって言われたから)・・・私(透火)と、双子ちゃん(眞那と瑠那)、そして特別に3人目の妹、彩火も連れてきた。
え、ナゼ連れて来れたのかって? そりゃシャオくんにお願いしたから・・・ってのもあるけど、本人の目の前でそういう依頼をシャオくんがしたから・・・
・・・今になって思うと、こうなる事を知っててワザとやったのかな・・・

「・・・冷たい。」
「とぉりゃ~♪ ・・・・・・・・・ガバゴボググギャ、足攣ったブクブク・・・」
「準備運動もなしに速攻で飛び込むからです、自業自得ですよバカ姉。」

(・・・今日は、彩火のお守りは2人に任せてと・・・)
「さて、調査に向かいましょうかね・・・」

調査・・・そう、ココに来た本来の目的・・・。
惑星ウォパルの一部地域・・・それも非常に限られたエリアだけ、敵性体がまったく出ないという奇妙な区域があるという。
この原因と状況の特定ができれば、今後の掃討作戦への影響もあるし、小規模とはいえ非戦闘地域の確立ができればアークス全体にとっても有益となる。
・・・目的は様々あれど、戦闘目的以外で惑星に降り立てる場所があるという事は、それだけで非常に価値のある事なのだ。

「・・・確かに、全く何も出てこないなぁ・・・。」
『奇妙といえばそれまでだが、何かしら原因があるのは確かだ・・・調査範囲をもう少し広げて捜索を行ってくれ。』
「了解です。」

・・・そういえば最近、通信相手がヒルダさんしか居ない気がする・・・気のせいかなぁ?

- 1時間後 -

「ん~、やっぱり誰も居ないし出てこない・・・。」

調査開始からたっぷり1時間は経過してる・・・でも、敵性体どころか一切の生物反応が無い・・・。
たんに敵性体が出ないだけならそれこど非戦闘地域確立って事で万々歳なんだろうけど・・・一切の生物反応なしってトコが逆に引っかかる。

「ヒルダさん、このエリア・・・不気味すぎますよ・・・。」
『確かにな・・・それほど広いエリアではないとはいえ、生命反応が皆無という点が妙だ・・・。』

ふと、私は以前の事を思い出していた・・・妹・・・彩火を保護した施設の出来事だ。
地下施設だったとはいえ、同じウォパルでの出来事・・・関連性が無いとは言えない。

「・・・ヒルダさん・・・もしかしてだけどこのエリアって、例の海底施設と何か関係ないですか?」
『少し待て・・・あぁ、お前のカンが当たったぞ・・・そのエリアは遺棄施設、ルーサーの研究施設の真上だ。』

となると、原因は自ずと見えてくる・・・海岸から見えない場所にでも、海王種やその他の生物が入って来ないような「仕掛け」があるという事だ。
設置者が虚空機関なら、アークスに対して影響しないのは自明の理・・・という訳だ。

『・・・シャオから追加の依頼が来た、その原因となる「仕掛け」の位置を特定しろ。手段は問わん、機材が必要なら随時転送する。』

・・・デスヨネー(´-∀-`;)
そうこうしてる間に日が傾き始めた・・・ウォパルの自転周期は極めて短い、正確ではないが体感でおよそ8時間くらいで1日が終わるほど高速の自転周期だ。
それでも何故か重力は一定かつ極めて知的生命体の居住向き、そしておまけに惑星総面積の85%が海水という水の星である。
宇宙から見てもメッチャ水だらけだし、惑星自体もけっこう大きいんだけどねぇ・・・。

「機材的なものもありますけど、もっと必要な物があります。」
『・・・なんだ?』
「・・・お泊り用の簡易セット。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・準備でき次第、初期座標に転送する。』

・・・絶対笑われた、あの間で絶対笑われたよ。(´・ω・`)

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