第16話 時の流れに揺蕩うもの

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「……して、此奴が我等が運命の鍵か?」

捕らえられた少女、彩火を見て【憤怒】が言い放つ。
【傲慢】がそれに応えるかのように言葉を紡ぎ始めた。

「ダークファルスの真の目的は深遠なる闇、その発生を助長させる事……そしてダークファルスそのものが深遠なる闇の苗床であり発生源、つまり私達の誰かが深遠なる闇へと至れば、その望みは叶う……だけど、私達には別の目的がある」

彼ら、新生ダークファルス達はダーカー種の悲願である「深遠なる闇」へ至る事など皆無だった……彼らの目的はかつての【巨躯】と同様、最初から歪んでいたのだ。

「我が悲願は、アークスと……その研究者たちへの復讐……奴らは我が能力を恐れ、あろう事か我が研究を抹消して我共々排除したのだ……『その様な事など、許される筈もない』等と世迷い言と共にな……」

【憤怒】の正体は、かつてアークスの研究部に所属していた研究者だった。
彼の研究は「生命倫理と人権すら無視した異常性」に満ちた内容として糾弾、それを司令部が認識した事で職と任を解かれ、路頭に迷う結果となった。
それを彼は逆恨みし、自らダーカー側へと堕ちる事で力を得、復讐しようと決意したのであった。

そして、少なからずアークスへの不満があるのは他の4人も同じだった。
だから、彼らは潜伏し続け、少しづつ力を蓄えて復讐の時を待っていたのだ。

「私も、アークスには辟易していたのよね……」

「俺は、静寂を乱された……俺の静寂を乱す者は、全て消す!」

「あいつら気に入らない、食ったら美味しいかな?」

「ふふふ、目的を達成したら思う存分食べれるわよ?」

【嫉妬】と【怠惰】、【嫉妬】や【傲慢】もそれぞれアークスに個人的な恨みがある。
新生ダークファルスの目的……それは、アークスという組織の壊滅だった。

「……ふふふ、我等が目的……奴らを殲滅した暁には……!」

【憤怒】は自らの未来を考えほくそ笑む……
新生ダークファルス達の悲願達成……それを阻止できなければ、宇宙に真の平和は訪れないのだろう……。



- マザーシップ・シャオ内部 -

(……新生ダークファルスの目的、それさえ分かれば……この程度の難題なんて……!)

シャオの判断により、行方不明となった彩火の存在を公表すると同時に、アークス全体へと捜索指示を出して行方を追っていた。
だが、連れ去った新生ダークファルス達の目的は分からないまま……時間だけが過ぎていく。

「くそっ……あぁ、やっぱり……人って辛いなぁ……」

(でも、僕は後悔なんてしない……人はどんな困難だって、心が折れなければ前に進める……より良い方法を見つける、そしてやり直せる……僕と僕達は信じるよ……今までも、そしてこれからも!)

シャオは1人、耐える……ヒトの感情を持つが故に、苦しむ……だが彼は諦めない、そして逃げ出さない……これは己が自身で選んだ道……そして人を信じているから。




- 惑星ウォパル・海岸エリア -

(……ココにも反応はなし、かぁ……)

透火は今日も、彩火を探し続けていた。
既に彼女が連れ去られて2週間が立つ……アークスも総掛かりで彼女の行方を探しているのだが、その行方は一向に分からぬじまいであった。

「あの子を託されたのに、私は守る事が出来なかった……私、保護者失格だね。」

「……そんな事はありませんよ。」

1人呟く透火の背後に立っていたのは、六芒均衡の三……情報部の統括者、カスラであった。

「彼女はルーサーの被害者の1人です……それを何故、彼らが欲したのかは分かりませんが……彼女が連れ去られたのは、貴女1人の責任ではありません、むしろ我々、情報部の失態です。」

カスラはカスラで己の慢心が招いた結果だと悔やんでいた。
だが、何事にも完璧など無い……だからこうして自らも探索に出向いている……人の上に立つ者として、挫折している暇は無い。

「でも、あの子は……! 私に『助けて』って言ったんです!!」

「今を悔やむのは止めなさい!
 ……今は一刻も早く彼女の行方を掴み、救出する事が先決!!
 後悔は……終わってからでも、遅くないはずですよ……?」

厳しい言葉だが、カスラは敢えてその態度を貫いた。
今までもこうしてきたが故の癖なのだろうが、その眼には自信が溢れている。
未だ目覚められぬ守護輝士の彼も、この現状を知れば迷わずそうするだろう……そしてどんな困難だろうと、それを覆して未来を掴むだろう、そう信じているから。

「……そう、ですね……私が先に泣いてちゃ、ダメですよね……お姉さんなのに」

一人っ子だった彼女が、唐突に手に入れた家族という宝物。
奪われたのなら、取り戻せばいい……少々脳筋的な発想だが、元々彼女自身の性格もそうなのだから仕方がない。

悔やむのは後だと気合を入れ直し、探索を再開しようとしたその時、アークス全員へと緊急警報が発令される。

『こちら、アークスシップ10番艦ナウシズ! シップ内に異常空間数値変動を確認……これは……?!』

通信先のシエラは、異常数値の詳細に目を通して驚愕した。

『そ、そんな……アークスシップ内にダークファルスが直接空間転移してきます!!』




次回予告

突如としてシップ内に空間転移出現したダークファルス
その姿は、以前に現れたどのダークファルスとも一致しない新たな1体だった
シップ内で繰り広げられる攻防……
新たなダークファルスの素顔が晒された時
アークス達は驚愕の真実を知る事になるのだった……

次回、PSO2-ACE’s
第17話 【災禍】、降臨

運命の時、それは人知れず……そして容赦なく訪れる……

次回の更新日は8/26の予定です。
お楽しみに!

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