フォトナー、芙蓉……突如現れた謎の女性。
瀕死の重傷を負った透火の治療という形で彼女の身体に間借りしている謎の存在。
……いや、本人は間違いなく自分を「フォトナー」だと言った……
それはつまり、過去を知る存在が増えたと言う事……そして、新たな火種が燻り始めるキッカケになるかもしれない……
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「……本当に、彼女(透火)じゃないのかい?」
「さっきからそう言うておるのじゃ、お主は模倣全知存在というのに随分と妾を疑っておるのぅ?」
シャオの言葉に、さも当然の反応をする透火(?)
報告書は読んだ、彼女自身の定期検査資料と比較された身体データでは特に異常は認められず、シエラ経由で該当の事象となる映像もチェック済み……だが、そのどれもが彼女を「アークスとは違う何かだ」と指し示す……
「まぁ、信じるかどうかはお主等次第じゃな、今の妾の目的はこの体の主……彼女を死なせぬよう取り計らうだけじゃ」
ケラケラと笑う少女に、面倒事が増えたとシャオは頭を悩ませる事となる……
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「……で、実際問題……俺たちは、アンタをどう呼べばいいんだ?」
そう切り出したのはシナノだ……シャオへの報告や面会も済ませ、透火(?)の身柄は、当事者であるシナノ達のチームで監視込みで様子見をする事となった。
興味の尽きない彼女を連れてゲートエリアへと戻ってきての第一声だった。
「そうじゃのぅ……この体の本来の主は眠っておる故、妾の名で呼んでくれ……お主等をいつまでも混乱させるのは不本意じゃしな」
自称フォトナーである芙蓉はケラケラとそう言ってのける……だが、フォトナーという存在はアークスにとって複雑な思いをさせる種族だ……
「……あら、アンタ達……珍しいわね、こんな場所で」
そう声を掛けてきたのは……金髪ショートヘアに独特な紫の差し色が入った髪と、整った顔つきに鋭い眼光、いかにもクールビューティといった女性……ユクリータだった
「あぁ、さっきの戦闘でちょっと面倒が起きてな……シャオと協議してたんだ」
今回の件はフォトナーが絡む事案の為、珍しく情報統制が敷かれており……一部アークスにしか詳細は明かされてない……無論、今回はユクリータは部外者なので当たり障りない範囲の説明をしようとsukeixisuが口を開いたが……
「……この気配、この匂い……何か覚えがあるわね……!」
突然ユクリータの後ろから現れた少女……いや、少女と言うのは本人に失礼だが、そう見えるので仕方ない姿の人物……かつて「美の女神」と持て囃され、永遠の美を求めた結果……その感情をダークファルスに利用され、【若人】となった……彼女も、顕界した経緯は違えどフォトナーだった女性、アウロラである。
「……むっ、このヒステリックで鼻に付く仔犬のような声は……!」
フォトナー同士は惹かれ合うのが宿命なのか……奇妙な反応した芙蓉。
互いの姿を認識し、アウロラは奇妙な顔……対する芙蓉は……爆笑し初めた。
「なんじゃお主そのちんんちくりんな格好は?! まさかとは思うたがそんな姿で生きて居ったとは……いやはや、妾もこればかりは見抜けなんだ!!」
そして、突然の爆笑に怪訝な反応をするのはもちろんアウロラである。
「……何よアンタ! いきなり人をちんちくりんだとか失礼な!! 好きでこんな姿になった訳じゃないわよ!? って……アンタ、まさか……?!」
一頻り大笑いから落ち着いて呼吸を整え、アウロラの問いに答える。
「何じゃ、お主……妾を……この【東煌の妖花・芙蓉】を忘れたのか?」
「ちょ、忘れるわけ無いでしょ!? こんな時代遅れの言動する性悪女なんて、忘れたくても忘れられないわよ!!」
あまりのヒートアップ状態に、シナノ達は蚊帳の外へと放り出された様な状態に陥ってしまっていた……
「……あの子、透火よね? 一体何がどうなってるの? なんでいきなりアウロラと口喧嘩なんて……」
「あー、すまん……多分すぐ事情は説明されると思うんだが……今の彼女は透火じゃないんだよ……」
要領を得ないUKAMの説明に疑問符しか浮かばないユクリータ……そこへシャオからの一斉メールが着信する。
その件名に一種の関連性を見出したユクリータは、早速メールを開封して読んだ。
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「……はぁ、もう1人のフォトナー、ね……アンタ達も苦労してるって訳か」
未だ少し釈然としないが、とりあえずの状況は理解したユクリータはシナノの肩を叩き同情した……理不尽にもこの状況を何とかする役目を押し付けられたシナノ達の目も、早々にうんざりしていた。
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「……で、なんで今アンタがココに居るのよ? そもそも、その身体……アンタのじゃ無いでしょ? 一体何がどうなってるのよ?!」
「お主こそ、そんな姿になって何故未だに生きておる? お主は……」
芙蓉は自身のアウロラに関する記憶を口に出そうとして止めた。
視線の先には、バツが悪そうに黙って俯くアウロラの姿……そして、言い過ぎじゃないかと嗜める様な視線を向けているシナノ達だった。
「……すまぬ、妾の軽率であった……お主の抱えていた問題はこの時代では『でりけぇと』な物じゃったな……」
透火の身体を間借りしている際に見る事になった彼女の過去の記憶……その中にあった懐かしい名前が気になって覗いた時、芙蓉は現在に至るまでのアウロラの顛末を見てしまっていた……その事を思い出した為、すぐに謝罪したのである。
「……良いわよ、そんな事で一々鬱になっる暇なんて無いし……それより、アンタはなんでその子の身体になってる訳? ちゃんと説明しなさいよ!!」
「この娘の治療のためじゃ、それ以外の他意など持っておらぬ」
「それじゃ説明になってないっての! 一から十までキッチリ順序立てて、無知な奴にも分かるような簡単な説明も出来ないのかしら?! これだからアンタと会話するの疲れるのよ……!」
……失礼、口喧嘩はまだまだ続きそうである。
破壊の杖で半身…まさかロート=ラウト系や過去作の悪版エルシディオン系の厄武器じゃねえだろうなw