第19話 時を超えた再会

「……んで、なんでアンタが今ココに居んのよ?」

アウロラの指摘にコホンと咳払いをし、居住まいを正す芙蓉……

「お主らは当事者故、明かしても問題ないじゃろうて……
 妾は、かつての封印戦役の折、自らを杖へと封じてその場の難を逃れたのじゃ……
 ダークファルス【双子】に喰われる前にのぅ」

ダークファルス【双子】……久々に聞く既知の名、アークスとして知らぬ者は居ないダークファルス……その中で最も無慈悲で純粋な衝動の塊だった者の名……

当時の芙蓉は、集っていた従者たちを逃す為敢えてその場に残って囮となり、機を見計らって自らを杖へと封じて【双子】の目を眩ませて難を逃れたのだという……

「……最も、その後ルーサーに杖となった妾は調べ尽くされ、さんざんコピーされたんじゃがの」

「……は? コピーだって?」

「うむ、杖となった妾は後にルーサーに収集されてな……しばらくしてあ奴が躍起になりおった創世器のコピーを作る過程で、妾の杖を参考にしたようじゃからのぅ」

創世器……かつて最高の技術を用いて採算度外視で製造され、唯一無二の性能を持つ現行の全ての武器の原型と言われる武器の総称……その中でたった一つ、オリジナルの全知存在が自ら手掛け……ルーサーが模倣し、劣化とはいえ量産に成功した武器があった

その名は、白錫クラリッサ……
ルーサーがクラリッサを量産できた理由……それは、芙蓉が自らを封じた杖の存在があったらこそだと言う

「……なんか、今更だよな……アレがどうとか言うの」

「ンン、マァ……今ノ俺達ニハ別ニ気ニモセン問題ダシナ……」

「ハァ……お主ら、少しは妾に華を持たせても良いじゃろうに……」

龍鬼とUKAMの呟きに、呆れて盛大な溜息を吐く芙蓉……
如何せんルーサー関連の話題はアークスにとって「今更」であり、既に壁として超えてしまった手前、感傷や懸念を持つ者は極めて少なかったのである
それ故、芙蓉の思惑は盛大に的外れとなったのであった



【災禍】襲撃から数日後、芙蓉はシャオの許可をもぎ取って惑星ウォパルへと来ていた
理由は「あれだけの水を湛えた惑星など、フォトナー時代には頑として行けんかったのじゃ!! 是が非でも行きたいのじゃ!!」と散々駄々を捏ねまくり、元の身体の主である透火が羞恥で焼き切れそうな程の醜態を晒してまで……

「……最悪だわ」

盛大な溜息と共にそう呟くのは、同行者として選定・抜擢されたユクリータである
他にも、ユクリータの弟であるアフィン、六芒の四としてゼノと、その補佐官となったエコーが一緒だった

「ユク姉……そんなに嫌だったのか? 俺と任務一緒になるの……」

「……べ、別にアンタの事を言ってるんじゃないわよ?
 アレよアレ、アレのお守りまで私に回ってくるのが最悪だって言ってんの!」

盛大にツンデレムーヴしつつ、原因である芙蓉をアレ呼ばわりして指差すユクリータ
当の芙蓉はエコーに案内され、海底エリアの施設内をどんどんと突き進んでいた
既に調査隊や探索目的のアークスに調べ尽くされ、エネミーもほぼ居なくなったエリアではあるが、施設類は未だ生きている箇所が散見されており、油断はできない場所だ

「ちょい待ち……エコー、数歩下がれ。 芙蓉さん、アンタもだ。」

「……えっ?」

「何じゃ、ようやく面白くなってきたというのに……」

どうやらその先にはエネミートラップが仕掛けられていたらしく、六芒となったゼノの鋭い直感がその存在を感知した様だ……2人を下がらせ、センサーの場所を慎重に探すゼノ……創世器「戒剣ナナキ」を構え、エコー達の立っていた場所を踏み越えた瞬間に出現した海王種「ファルカボネ」2体を瞬く間に屠る

「……思ったより厄介な事になりそうだな、こりゃあ……!」

ゼノの言葉にエコー、ユクリータ、アフィンも武器を構える
芙蓉は素手だが嬉々として構え、発動したトラップによって海王種が次々と送り込まれてくる進行先を見るのであった




次回予告

エネミートラップに嵌った一行だが、素手でそれを呆気なく突破する芙蓉
困惑する一行を余所に芙蓉は奥へと突き進み、かつて自らを封じた杖を再び手にする

それは、破壊を呼ぶもの
それこそ、黒き妖花の杖
それは、かつての半身
それこそ、力の象徴たる物

次回、PSO2-ACE’s
第20話 破滅を齎す妖花



諸事情により、本来の更新予定日に間に合わず申し訳ありませんでした。
次回更新は変わらず12/23の予定です。
m(_ _)m

「第19話 時を超えた再会」への1件のフィードバック

  1. 破壊の杖で半身…まさかロート=ラウト系や過去作の悪版エルシディオン系の厄武器じゃねえだろうなw

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