トリニティから説明を受けつつ……現在、守護輝士が居るという『フランカ’sカフェ』へとやって来た一行。
そこで彼らを待っていたのは、大勢に囲まれ……時折イジられている風にも見える守護輝士の2人……そして彼らを取り巻く多種多様な人の集まりであった。
「……はいはい、みんなそれくらいにして。
最後の来賓が到着したんだから、挨拶くらいしてくれないと!」
到着するなりトリニティは手を叩いて全員の注目を集め、キリトとアスナに目配せをして挨拶するよう促す。
「来てくれたんだね、2人とも!」
「紹介するよ、彼らが俺達と最近知り合った2人だ」
「凄い注目されてるな……っと、俺はキリト……こっちがアスナ」
「よろしくね」
真っ先に挨拶に来てくれたのは、キリト達と年齢も近そうな……10代くらいの少年だった。
「……よろしく、2人はこっち来てもう長いの?」
「まだそんなに長くはないかな……大体2~3週間ってトコだよ」
「ふーん、じゃあアンタ達はアタシ達の後輩って訳ね」
突然、少年の背後から茶髪の少女が会話に割って入り、少々尊大な態度でキリト達を見比べている……キリトは一瞬、意味が分からなかった。
見るからに目の前の彼らの方が雰囲気や年齢的に下の様に思えたからだ。
「あぁ、勘違いしないで……アスカが言ったのは『こっちと交流を持った歴』が基準だから……」
「一々細かな説明しないでよバカシンジ!!
あっちの方が歳上なんだからそれくらいすぐ分かるっての!」
シンジ、アスカと互いをそう呼ぶ2人……だが、すぐ後ろで赤い目の少女が無言の視線を放ったのに気が付くと、アスカはそそくさと去っていく……
「……仲が良いんだね、あなた達」
アスナの苦笑い混じりの言葉が、シンジに掛けられる
キリトは2人の名前に、ほんの僅かだが……奇妙な違和感を覚えていた。
「何ていうか……腐れ縁、って奴ですよ」
シンジも苦笑いで返し、先程見つめられた赤い目の少女の元へと歩いていった。
そこへ、スーツ姿の男性と赤髪の女性……その2人に手を引かれて銀髪の少年が歩いてきた。
「こんばんは、あなた達も守護輝士の知り合いなんだ……私はヒツギ、八坂火継よ」
「八坂? って事は日本人?!」
「え、えぇ……そうだけど……」
「リアルネームそのまま?! 実名で登録とか何考えて……」
急に態度を変えたキリトとアスナに、困惑するヒツギ……その時、一緒だったスーツ姿の男性が会話に割り込んだ
「2人とも落ち着けって……何に驚いてるか知らんが、俺達は生身でこっちに来てるんだ……それに、ココじゃそう珍しくないぞ?」
それは認識の相違が生んだ誤解……
キリトとアスナは疑いこそ持っていたものの、ここがどういう世界なのかという確定情報は未だ持っていない状態……対してヒツギ達は既に「この世界は現実である」という認識だ。
「ちょっと待ってください! それじゃあ……?!」
「やっぱりな、お前らもゲームだという認識だったか……
残念だがオラクルは間違いなく、現実であり異世界だ……俺達も、昔は普通にゲームだと思ってたがな」
突如として突き付けられた事実……つまり、ココに居る全員はゲームのアバターやNPC等ではない……皆が全員、当たり前に生きている人間なのだ。
「……ははっ、スゲェや……俺達、ゲーム感覚で異世界旅行してるんだってさ」
開いた口が塞がらないキリト……対してアスナは、自身の妄想の一部……もし、ALOのような異世界があるのなら、キリトと2人で思う存分旅をしてみたい。
……そんな淡い夢を描いていた、それがこんな形で実現した……いや、していたとは思ってもみなかった。
「どうしよう……こんな急に、叶いっこない夢が現実になってたなんて……!」
キリトとアスナ……2人は「種(ザ・シード)」によって組み上げられた「ALO」というゲームの仮想世界から、アカウントデータをコンバートして「PSO2」へとやって来ている……理由は「別のゲーム世界の二刀流を調べる事」。
いくつかのゲームの二刀流を体験した後、SAOやALOと同じフルダイブ型オンラインゲームであるPSO2と、その中で二刀流とされる「バウンサー」の存在を知り、実際に体験する為に来たのだった。
「あぁスマン……俺はエンガ、八坂炎雅だ……んで、こっちが義弟のアル」
「はじめまして、八坂アルです……よろしくおねがいします!」
名乗ってない事に気付き、義弟と合わせて自己紹介するエンガ
キリトとアスナも、最早現実として受け入れるしか無い……そう腹を括って応じるしかなかった。
「……そういえば、この集まりが何なのか……誰からも説明が無かったんだが?」
その後も何人かPSO2の主要キャラと挨拶を交わした後、キリトは唐突にこの集まりが何なのか聞いてない事を思い出す……案内役だったトリニティからは「守護輝士が人集りから抜け出せないから、2人に謝罪するのと、出来たら連れて来てくれって頼まれたんだよ」と聞いただけ。
「……おやぁ? これはアタシ達の出番ですねぇ?」
唐突に後ろから聞こえてくる少女の声、振り向くとキリト達より背の低い……顔立ちや特徴の良く似た2人の「エルフ耳(ニューマン)」の少女が揃って立っていた。
「すみません、パティちゃんが酔って暴走気味で……あ、私はティアです」
「アークスいちの情報屋、パティエンティアとは私達の事なのです!!」
置いてあるのは軽めのアルコール類もあるとはいえ、見事に酔っている姉のパティと……頬が若干赤いものの、口調や態度はまだ普通に常識的な妹のティア。
キリトとアスナは、酔っている姿が少し気になったものの親切心から……と思って話を聞こうとしたが、それは悪手だったと後に後悔するのであった。