第7話 絶望と希望と(後編)

- 異常反応中域・ダーカーの巣 極大反応潜伏エリア -

仮設拠点外縁部の戦闘が終了して約2時間後、侵攻作戦は滞りなく進み、アークスの大部隊の大半が最深部と思われる広い平原のようなエリアへと侵入していた
道中のダーカーはほぼ殲滅され、各シップからの観測で極大反応がこのエリアの何処かに潜んでいると言う報告を元に、広大なこのエリアを探索している

「……なぁ、さっきから思うんだが……。」

「何だよ、もったいぶらず早く言え。」

「……なんで、ボクたち六芒と一緒なのん?」

「……………………知らねぇよ。」

「どうした、ビビってるのか? なぁに心配するな!
 このオレが一緒にいる限り、君達の安全は保証されたも同然だからな!!
 はぁ~っはっはっはっはっ!!!」

先頭で頭を抱えているのは鯛頭の黒コートと薄紫の髪の2人……「7日」のメンバーであるずんとあまにただった
そしてそのすぐ後ろで高笑いをするのは六芒均衡の六であり、人助けが趣味のヒューイである

現状は中規模の部隊を編成、その監督役として六芒を始めとした実力者が隊長として率いる形で先導し、該当エリア内を手分けしての調査……
確かな極大反応はあるものの、該当エリアが広大過ぎるばかりか、遮蔽物や何かしらの残骸がレーダー波を撹乱しているせいで拠点や軌道上からの広域レーダー索敵が行えず、状況的に目視と近接レーダーしか頼れるものがなかった

「……ふぅむ、このエリアは特に遮蔽物が多いねぇ……
 影から襲撃されないように注意しなよ~?」

双機銃を構え慎重に周囲を調査するクロトが、自分の周囲に居いるアークス達にも注意を促す……事実、この状況はあまり良くない状態でもあった

広大過ぎる調査エリアのせいで部隊間の距離は離れる一方、戦力の大半は周囲の掃討戦に割かれ、調査チームの人数は100名程度
六芒均衡のうち2名がこちらを指揮しているとはいえ、ここはダーカーの巣……
ココでは空間の制約なしに現れるダーカーは厄介であり、遭遇から無尽蔵に湧いてくる可能性も捨てきれない

「…ともかく、周辺の調査と警戒は怠ないで…いつ襲われてもおかしくなんてないんだから…。」

自身の後方を警戒しつつ、サラが会話に入ってくる
口調は普段と変わらないものの、表情は固く、内心は戦々恐々としている様だ

« アークス各員に通達。»
« 敵の反応は微弱で不鮮明だが、いつ現れても不思議ではない。»
« 引き続き、各員最新の注意のもと調査を続行しろ。»

最深部の調査に移行して、そろそろ1時間が経過しようとしている
しかしながら、敵の足取りや痕跡すら見つからず、ましてやいつ襲撃されてもおかしくない状況……この膠着状態は、確実ながら徐々に、アークス達の平静さと精神力をジリジリと削っているのだった。



- ???? -

「…チッ、いつまで待たせる気? 奴らがすぐそこまで来てるっていうのに…。」

不満を隠すことなく苛ついている黒女、セミロングの白髪を無造作に縛り、左右の目は色が違うオッドアイ…その左目にはまだ付いて間もない傷跡があった
そこへ黒女の肩に手を添え、まぁまぁという風に制しながら長身の黒男が現れる

「そんなに苛立つなヨ、キレイなお顔が崩れちゃうゼ?」

「うっさいわね! アンタ、今まで何処行ってたのよ【怠惰】!」

「ちょっと野暮用があったんでネ、そう怒るなヨ【嫉妬】。」

「……二人ともうるさい……【憤怒】に頼んでオシオキして貰う……?。」

【怠惰】の後ろで小さく座り込んでいた黒尽くめの子供が【憤怒】の名を出す……容姿は子供らしく、あの【双子】にも似た風貌だ

「…じょ、冗談よ【暴食】…ホント、苛ついてた私が悪かったわ……。」

【憤怒】の名に態度を急変させる【嫉妬】、【怠惰】も頭を掻きながら謝罪の態度を見せた……それで満足したのか、【暴食】も言葉を続けなかった
遠目からその様子を見ていたもう一人の黒男、【強欲】が別件を切り出す

「…目標は確認してない、だが大体の目星は付いた。
 十中八九、奴らの勢力圏…シップ内に居るはずだ……奪えるかは別だがな。」

「いずれにせよ、奴等とは再び相見える……今は各々、その傷を癒せ。」

言葉と主に大男、【憤怒】が暗がりの奥から現れる
その隣には、先程レギアスと大立ち廻りを行った赤髪の女の姿もあった

「……さて、【色欲】……先程の失態、理由を問おうか。」

声とともに【憤怒】は隣りに立つ赤髪……【色欲】を睨みつける
周囲一帯を包む剣呑な空気、【憤怒】の圧が一点、【色欲】へと注がれた
だが【色欲】は怯む様子もなく、おくびれる事もなくただ一言を放った

「……興が乗らん、それだけだ。」

他の4人が戦慄に顔を歪ませるが、【色欲】は意に介さずその一言を最後にその場を去った

「……ちょっと、アイツ本気でヒトの話聞かないヤツね。」

【色欲】が去ると同時に圧も消え去り、やれやれと言わんばかりに【嫉妬】が口を開く……【暴食】は何処からか菓子の袋を取り出して食べ始め、【強欲】も壁に体を預けて【憤怒】へ質問をする

「それで、アイツ……【傲慢】は?」

「彼奴が最も奴等の眼を欺ける……
 それに、彼奴の最終目的は我等とは違えど、 我等と敵対はせぬさ。」

「で~も、あの女……イマイチいけ好かないのよね……
 それに何だってあんな事してるんだか……。」

【嫉妬】は【傲慢】の本懐に対して、懐疑心を持っていた
だが、その言葉に【憤怒】は笑い出す

「ククク……彼奴の本懐などどうでも良い事……
 我は奴等を根絶やしにできればそれで良い、深遠なる闇の復活もその目標の一部に過ぎん!」

不気味な笑い声と共に、【憤怒】は己が本懐を口にする……
「深遠なる闇」の復活、ダークファルスの悲願にして最大の目的……それすらも目標の一部として組み込み、己の目的としてアークスの全滅を掲げる【憤怒】……
その脳裏には、かつて仲間の裏切りに遭い、失意のうちに死んだ一人の男の過去がフラッシュバックしていた

「アタシも、アイツら目障りだし……
 その【深遠なる闇】ってのが手っ取り早くアイツらを消し去ってくれるんなら何だってやるわよ。」

「ボクも、食べ放題にさんせ~い♪」

「……そもそもアレは我等の玩具、度を超えたモノは消してしまう他無い。」

【嫉妬】【暴食】【怠惰】、それぞれも己の欲望剥き出しの言葉を口にし、次々とその場から去った
残る【憤怒】は未だ笑みを絶やさず、再度アークスに復讐を誓う

「ふふふ……せいぜい余興を楽しむが良い……アークスよ。
 貴様達の最後をこのダークファルス【憤怒】が見届けよう……
 クフフ…フハハハハハッ!!」

不気味な笑い声を残し、【憤怒】もまた暗闇へと姿を消し、直後、地響きと共に壁が崩れ落ちた



- アークスシップ艦橋 -

「……! そんな、皆さん逃げて下さい!!」

突如鳴り響く警報音、異常事態を察知しシエラは宙域へと調査に出ていたアークス全員へと警告を発信する為通信のチャンネルを開放するが、調査エリアの地下部分から出現した極大反応の正体に絶句し、ただ「逃げて!」と叫ぶしかなかった



- 異常反応宙域 ダーカーの巣 極大反応潜伏エリア -

突如として揺れるはずのない地面……いや、この宙域に浮かぶダーカーの巣全体が揺れ始めた
元々ダーカーの巣とは、過去にあったダーカーによる襲撃で船体が崩壊し、放棄されたアークスシップを何らかの方法で変貌させたものであり、至る所に人工物の成れの果てや、機械だったものの残骸、巨大な構造物がありえない形にねじ曲がった物など、人の手によって作られた物が散乱した、巨大な宇宙船の残骸である

つまり、天体や惑星などとは違い、自然現象など起きるはずがない
しかし今、確かにこの場所は揺れていた

« ……! そんな、皆さん逃げて下さい!! »

通信越しにシエラの警告が響くが、この場にいる誰もがそんな事など気にも留めない事が起きていた
突如揺れ始めた足場に無数の亀裂が入り、次々と口を開け、瞬く間に巨大な裂け目へと変貌……その奥から無数の巨大な「手」が這い上がってくる

立っていた足場が急に不安定になり、体勢を崩したサラだったが、直ぐ側にいたクロトに手を引かれまだ安定した足場へと引き上げられる
しかし、振り向いたサラのその眼に飛び込んできた光景は、想像を絶するものだった

「ファルス・アーム?! しかも、こんな大量に……!」

崩れた足場の裂け目から次々と現れる大量のファルス・アーム、そのまま上空へと舞い上がり、一定の高度へ達すると次々と折り重なり繋がり合って合体
次第に姿を表したのは、以前よりも巨大なダークファルス【巨躯】の姿だった

« クッフフフフ……フハハハハハッ!!
 虫ケラ共が幾ら集まろうと、この【憤怒】力の前には無為にも等しい!
 さぁ、アークス共よ……我が力を目に焼き付けて滅びるが良い!! »

To Be Continued…

次回予告

大地を引き裂き現れる巨大なダークファルス
【憤怒】と名乗りアークスに対して攻撃を仕掛けてくる一方で、
アークスシップでも異変が発生し、突如通信が遮断されてしまう
シップ防衛の為に残っていたアークス達の目の前にも
【怠惰】と【嫉妬】を名乗る別のダークファルスが出現、
シップ防衛の指示と通信復帰のため艦橋で悪戦苦闘するシエラにも
危機が迫ろうとしていた

次回、PSO2-ACE’s 第8話 「大罪」の名を持つダークファルス

キミは、生き延びることができるか……?

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