第15話 明日への絆

「……眞那ちゃん……なの……ッ?!」

言葉を掛けようとする透火を暴走龍の右腕が襲う……
幻影を駆使して回避するが、その顔は驚きと不信感で彩られていた。

『グヴウゥゥゥゥ……!』

« 今の彼女は、負の感情で体外のフォトンが一時的に変化しているだけの状態だ。
 反属性フォトンで攻撃して鎧を崩し、本体を引きずり出せばまだ助けられる! »

シャインブルーから状況を聞き、通信越しに解決法を提示するトリニティ……
指揮通信が途絶している今、やれる事をやるしかないとシャインブルーはその場に居た全員を纏めあげ、光属性による浄化作戦を開始した。

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第14話 絶望の雨に吠えるもの

第2次増援のアークス達が見たものは、凄惨な現場だった……
黒雲垂れ込める空、降り止まぬ雨、濡れた戦場には巻き込まれ命を落とした民間人と、成す術なく殺されたアークスの死体が転がっていた……
そこから視線を上に上げると、映ったのは低めのビルの上に佇む2つの黒い影と、そこから落ちる1つの影……
しばらくの沈黙の後、慟哭の如き叫び声が聞こえてきた

それから起こった事は、箝口令が敷かれ、ごく一部しか事実を知る者は居ない

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第13話 運命(後編)

市街地上空……認識偽装を使ったままビルの屋上で佇む黒尽くめの影が1人
【傲慢】はあるものを探すように気配を辿っていた

やがて、微かな気配と力の流れを感じ取る事に成功し、その端正な顔を醜く歪めた

「……ククク、やっぱりここに居たわね……!」

その視線は虚空……いや、眼下の市街地のある場所……シェルターへと避難する人混みの中、その中の1人に注がれていた





アークスシップ4番艦 アンスール・市街地

「彩さま、大丈夫ですか?」

この場には似つかわしくないメイド服姿で周囲を警戒する小柄な少女……瑠那は、シェルターへの行列の少女を心配して声を掛ける

「……だいじょうぶだよ、お姉ちゃん」

彩さまと呼ばれた少女……彩火は瑠那に心配をかけさせまいと気丈に振る舞う
困惑した表情ながらもしっかりした物言いに、瑠那は一瞬だけ顔を緩め、再び周囲の警戒へと戻る
戦闘が激化し、民間人にもダーカーの襲撃があちこちで発生したため、上層部は民間人の避難誘導に近隣のアークス達を動員させ……そのメンバーだった瑠那はその中で状況に混乱していた彩火を見つけ、シェルターへの行列へと合流していたのだった

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第12話 運命(中編)

« 緊急事態! アークスシップ10番艦ナウシズの動力部に異常発生! »
« 常駐職員全員の生命活動停止を確認、同時に敵性体の侵入の痕跡を確認。 »
« 痕跡の残留フォトンから侵入者はダークファルス相当の存在と思われる! »
« 周辺区画の非戦闘員は直ちに退避、並びに艦内のアークス全員に緊急通達! »
« シップ動力区画内にダークファルス相当の敵性体が侵入した。 »
« 全アークスへ緊急指令! »
« 10番艦の動力区画に侵入した敵性体を排除せよ! »

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番外編「アークスの年始事情」

※ このサブストーリーは外伝小説版のエピソード4終了後を描いたものです。
  その為、本家では本来登場しない人物及びその後の展開など、筆者の妄想を
  小説版と同様に詰め込んだ作品ですので、本家の展開と混同しないよう注意
  して閲覧して下さい。

マザー・クラスタとアースガイドという2大勢力の地球における覇権争い(?)も終息し、地球では「新年」を迎えていた。
オラクル側でも、過去に密かな交流が行われていた際に暦や時間軸などの基礎知識や情報などもほぼ同一であった事から、本格交流が始まって間もなく、地球における季節的な行事の概念や仔細などの情報も共有され、同じく新年を迎えていた。

これは、そんな時期におけるアークスと地球人が織りなす「年始」の様子である。

「新年、あけましておめでとうございます。」

« おめでとうございます~、
  去年はなんだかんだで凄い1年でしたけど、無事に年を越せましたね。»

通信越しに赤髪の少女とシエラが笑い合う
赤髪の彼女の名は「八坂火継」、オラクルとは異なる次元に存在する惑星・地球に住まう異世界人であり、アークスの協力者の一人である
彼女を含め、この地球には「アークスの協力者」が多く存在し、経緯こそ其々に異なるが、全員がアークスと好意的な関係を築いていた

「ホント、いざ振り返ってみると我ながらよく生きてたなって思ってるわよ。」

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第11話 運命(前編)

……一大攻勢から数日後

「……以後、散発的に発生しているダーカー襲撃は、過去の事例よりも規模を若干縮小、出現頻度に至っては大きく水準を下回っている事から、先の大規模攻勢は一定以上の戦果を挙げたものと見做して良いでしょう。」

副司令として報告の総括を読み上げるテオドール、列席している六芒均衡を筆頭に上層部の面々ウルクも静かに内容に耳を傾け、管理者であるシャオも長期集中演算の開始を遅らせて会議に参加していた。

「依然として新たに出現したダークファルスの行方は掴めぬまま…か。」

レギアスが漏らすように現在の最大懸念事項を口にする
新たに出現したダークファルス、過去に出現した【巨躯】と【若人】に酷似しながらもそれぞれ違う能力を獲得し、もはや別物として認識されていた。

「そして自らを【憤怒】そして【嫉妬】と名乗っていました、それぞれを個人として認識し、また呼び合っている事から、今回のダークファルスは少なくとも、個々の思惑で動くよりも、ある程度の連携ないしは共闘関係を以って行動していると見て良いでしょうね。」

ダークファルス【憤怒】は【巨躯】に酷似した外見を有するも、その固有能力は「瘴気」……耐性のない生物の体を徐々に蝕み、やがて自らと同じダークファルスの眷属であるファルス・アームへと変貌させる侵食能力を保有、現状では状態異常を回復するテクニック「アンティ」での回復が見込めず、外科的手段によって解毒処置は施せるが、一度侵食された生体組織を復元する手段はなく、影響を速やかに排除するしか対処法が無い

同じく【若人】に酷似した外見を持つダークファルス【嫉妬】の固有能力は調査の結果「重力」と認定された
その効果範囲は限定的ながら、対象物を空間ごと切除・抹消する能力は、効果発生前の状態に限定して一定以上の高圧縮フォトンによる物理的干渉を行う事で無力化には成功しているが、一度効果が発生してしまえば回避も防御もできないのが現状である

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第10話 伝説は塗り変えるもの

« フフフ…我が力に平伏せアークス共! »

「戦闘体」へと姿を変えた【憤怒】が吠える
その声は後方援護に徹していた一部のアークス達に対し、底知れない恐怖を想起させていた

「…勝ち目なんて、あるのか…?」

「あんな化け物、勝てっこないぜ……」

「クソッ、体の震えが止まらねぇ!」

「いけませんね…そろそろレギアス達の援護に回りたいですが、こうも想定外の事態に見舞われると…!」

カスラの表情がわずかに歪む、あれほど巨大だった【憤怒】の完全体が突如としてかき消え、同時に大量の瘴気ダーカーも姿を消している
しかし、周囲に漂う息が詰まるほどの強烈な存在感と威圧感、そして絶望感は微塵も減っていない
先行したレギアス達の安否を気遣いながらも、カスラは残存戦力を再編成し直すべく各部隊の状況把握に務める他無かった

その時、上空を1機のキャンプシップが駆け抜けていく
機体の側面には「混沌に戯れし双子の亡霊」のシンボルが描かれていた

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第9話 過去から来るもの

増援として最前線へと降り立ったのは、以前にも新たなダークファルスと戦闘経験があるシナノ  sukeixisu 龍鬼 UKAMの4人と、その一助として新システム「MRS」の提唱・管理責任者でもあるトリニティと、助手という名目で連れて来られたセリスの5人だけだった

「5人・・・だけなのか? 」

人数を確認し、不安を拭いきれないオーザが言葉を漏らす
無理もない、ただでさえ現状は芳しく無く、相対するのは航宙艦レベルの巨躯を誇り、自らを【憤怒】名乗るダークファルスの完全体・・・
たった5人の増援が来ただけでこの状況を打破できるとは到底思えないのも無理はない・・・だが・・・

「前回の戦闘データと新型からのフィードバックのおかげで、多数の問題点も克服できたし、いくつかの改良も施せた・・・前よりだいぶパワーアップしているはずだよ。」

「そりゃ楽しみだな、前の相手はすぐ退いたから何か消化不良みたいな感じでモヤモヤしてたんだ!」

「フン、俺モアノ時ハ満足行クマデ殺リ合ッテナイカラナ・・・今度ハ本当ニ最後マデ付キ合ッテ貰イタイモンダ。」

「俺達もどこまで伸びてるか、前はすぐに終わっちまったし・・・キッチリ付き合って貰うぜ、ダークファルスさんよ!」

「俺達全員で未来を掴む・・・さぁ、アークスの時間だ!」

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第8話 「大罪」の名を持つダークファルス

「……な、なんなんだ……あのサイズは……!」

「デケェ……前に戦った【巨躯】よりも遥かに……!」

地を割って現れたのは、巨大な影……8本もの腕と眼を持つ、40年前に初代クラリスクレイスによって封印され、ごく最近において封印が解かれてしまい、再びアークスに対し“闘争”と称して戦いを挑み、今なお猛威を振るうダークファルス【巨躯】、その完全体と呼ばれる姿に酷似していた。

『……虫ケラ共よ、この我が自ら引導を渡してやろう……さぁ、歯向かえ!
 そして、この【憤怒】の力の前に力なく跪き、醜く滅び去るが良い……!!』

自ら【憤怒】と名乗り、自信満々にアークスへと宣戦布告。
同時に帯同させた大量のファルス・アームが周辺のアークスへと群がり、文字通りの蹂躙を開始した。

「……っ、シエラ! 全アークスに緊急指示! 調査地点LH403にて【巨躯】に酷似したダークファルスや取り巻きと交戦中! 大至急、応援を寄越して!!」

調査チームとして同行していた総務部副司令のサラが、自身の権限を以てシエラへ緊急指示を伝える

« わ、わかりました! 付近を活動中の全アークスへ救援要請を発令!
  以後は緊急対処マニュアル・B-3にて対応しますっ! »

指示を受け取り、シエラも即座に「緊急対処マニュアル」にてシップ内の各部署への指示と全アークスへの通知を開始……その間にも【憤怒】と名乗るダークファルスからは激しい攻撃が続いていた

『フハハハハハ! 我が力の前には、何人であろうと無力よ!!』

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第7話 絶望と希望と(後編)

- 異常反応中域・ダーカーの巣 極大反応潜伏エリア -

仮設拠点外縁部の戦闘が終了して約2時間後、侵攻作戦は滞りなく進み、アークスの大部隊の大半が最深部と思われる広い平原のようなエリアへと侵入していた
道中のダーカーはほぼ殲滅され、各シップからの観測で極大反応がこのエリアの何処かに潜んでいると言う報告を元に、広大なこのエリアを探索している

「……なぁ、さっきから思うんだが……。」

「何だよ、もったいぶらず早く言え。」

「……なんで、ボクたち六芒と一緒なのん?」

「……………………知らねぇよ。」

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